一生フォロ方十四フォローでござる![3/6]
はぁぁっと大きなため息つけば、
「幸せが逃げちゃいますよっ」
と微笑む花奈…とっくに逃げた、てかテメエが逃がしたはずだ。
並んで電車の吊革に掴まれば傍から見れば立派にカップルだろう…。
「【偉背痰】の後は、新作映画に行きませんか?土方さんのお好きな『萌えよ、豊萬娘!全部見せます』のUが今日からなんです、初日だから混むかもしれませんけど、今回も無修正らしいですし」
…前の座席に座る親子連れの母親は子供の耳を塞ぎ。
若い女はオレのことを軽蔑の眼差しで見上げている。
少し遠くに離れた場所に座るバンダナGジャン男は、ニッと笑って親指を立てているが。
止めてくれ…止めてくれ…本当のオレはそんな趣味じゃねェ!!!
「…オレ、ちょっと具合悪くなってきたからさァ、やっぱ今日帰るわ、じゃ」
花奈を置き去りにするように止まった駅で降りれば、大丈夫ですか?と追いかけてくる。
いや、大丈夫。
お前さえ離れてくれれば大丈夫だから。
今日、こそは…。うん、今日こそ、言わねェと。
「あのよォ、花奈」
「ハイ?」
「どんだけお前に付き纏われても、オレがお前のこと好きになんねェってわかってっか?」
キツイな、って思う。
だけど、いつものように諦めて欲しい、じゃコイツに通用しねェってこともわかってっから。
「正直、迷惑なんだよ、仕事の邪魔にもなるしな」
何も言わずにじっとオレの顔を見上げている花奈に、胸が痛ェけど。
「それに、オレもそろそろ身固めることも考えるわけだ…、だからオメエが側にいれば他の女と知り合う機会も減っちまうしな?こうやって非番の度に花奈と出歩いてたら余計にな」
今にも泣き出しそうな顔で、だけどそれを堪えるかのように、じっと唇を噛んでいる。
「つまりは、な…その、言い方悪ィけどよ…、もうオメエに付き纏われてんのはウンザリなんだよ」
わかってくれ、と最後に一番キツイ言葉を投げかければ。
一瞬顔を歪ませて。
ヤバッ、泣くのか?と思ったら。
眉をハの字にし、泣き出しそうな顔しながらも口元だけニッっと笑った。
「わかりました!!土方さん優しいから私勘違いしちゃってました。そうですよね、しつこいですよね、うん。…ただですね、あの最後に一言だけいいですか?」
笑っていたはずの花奈がいつの間にか顔中で泣きじゃくって鼻水と涙でミックスされた小汚い顔で。
「すごく嬉しかったから、私の髪の毛褒めてくれて!そんな人いなかったから、本当に本当にありがとう!!土方さんを好きになって側にいさせてもらえて今まで本当に楽しかったから…でも楽しかったのは私だけだから、その…ごめんね」
ゴシゴシと顔を擦って、カバンの中からゴソゴソと取り出したのはマヨネーズ。
「本当はもう【偉背痰】で買ってたの、行かないって言われたら渡そうと思って。…あげるっ!!じゃぁねっ!!」
バイバイと泣き笑いして手を振って。
到着した電車に飛び乗った花奈はオレから見えない場所に腰掛けて。
そのまんまどっかに消えていった。
残されたのは御上御用達のシールが貼られた立派なマヨネーズと、何だか後味の悪いオレ。
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