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「#幼馴染」のBL小説を読む
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to remind[6/6]

「さぁて、今日はけぇるとすっか」

脱いだ浴衣をまた吊るし、いつもの着流しに着替えて。

そうでもしなきゃ、このまんま花奈を抱きしめたくなっちまう。

なァ、何でオレのこと忘れちゃったんかな?

そんな、もん、だったから、なんだろな。

「じゃぁな」

…好き、だった…、ずっと。

だから、次の人生こそ、土方くんとかさ?

もっとまともなヤローと、しっかりとさ…。

泣き出したい気持ち抑えて

笑って手を振れば。

「…アレ?」

花奈は首を傾げて、その目から大粒の涙が零れた。

「え?」

「アレ?何でしょうね?…何だかもう会えないようなそんな気がしたんですけど?そしたら、寂しいなァなんて」

自分でもよくわからないんですが?と目を擦って笑っている花奈に。

胸が詰まる。

「…また、な」

頼むから泣くなよ、その涙で銀さん又勘違いしちまうだろ、コノヤロー。

いいからお前はこれからずっと笑っとけ、で忘れられないいい男でも作っちまえよ。

逃げるようにそこを出た。

カンカンとよく響く安っぽい鉄の階段にブーツの音が響く。

最後に見た面が泣き顔つぅのはどうもよくないわ…、胸を抉ってくる。

「銀さん、あのねっ、やっぱり依頼してもいい?」

背後からそんな声が聞こえてきて振り向けば。

泣き顔で降ってきた花奈…、降って、来た?!

オレを追いかけてきて階段の上段で勢いよく躓いた花奈を慌てて抱きとめる。

額と額をゴッチーンとぶつけ合わせて、お互いに地面をのた打ち回ってその痛みを逃してから。

起き上がって笑い出す。

「痛い」

泣きながら笑う花奈の額は真っ赤で、だけど。

「う、うぁ、銀さんごめんね、血ィ出ちゃってる」

オレの額からは真っ赤な何かが出ていて慌てて花奈はそれを着物の袖で押さえ込んだ。

「…花奈の方がデコは固ェってわけだ、てか危ねェだろ?何やってんの?!」

「…だって、銀さんに依頼しようと思って」

「依頼?」

「そう、浴衣の主の…」

「…会ってみたくなったのか?」

トクンと胸が高鳴る。

「…うん、でも、やっぱいいや」

「あ?何だよ?ソレ!!!」

何ソレ、一回持ち上げて落とすとか、何その難易度の高い技、銀さん泣きそうなんだけど!!

「だって…銀さん、のだもん」

「え?」

「…何で忘れてたんだろ?」

しっかりとオレの目を見て、微笑みかけてくる花奈は。

「花奈?」

「銀さんのなの、銀さんと花火大会行きたくて。だから縫ったの…」

オレのよく知っている、能天気で、だけど優しくて、そんでオレと目があえばすげェ嬉しそうに笑う花奈で。

「お前、記憶…」

「うん、…」

泣き笑いして飛び込んできたのは今度はオレの胸の中。

「…銀さんはマダオじゃない…。いつだって、私の中の大切な人だよ?…とっとと言っちゃえば良かった、銀さんのこと忘れるなんて思ってもなかったし、それならもっと早く言いたかった」

見上げてきた花奈は泣き顔でも嬉しそうに笑っていて。

あぁ、やっぱその笑顔、すげェ好きだわ、オレ。

「銀さん、あのね、ずっとずっとね」

「ま、待て、ダメだ!!そっからは、あの、オレに言わせてくんねェ?」

やっぱ格好付けたいし、と笑えば。

花奈は嬉しそうに頷いて。

その時を待つ。

いつだってそう、その可愛い笑顔に銀さんずっと惚れてんだからね?




浴衣、オレにくれよ?

んで、花火大会、一緒に行かね?

ただ…一個だけ頼みがあんだよ。

オレのこと、二度と忘れないで欲しいんだわ…。

お前に忘れられるってすんげェツライの?わかる?

…ずっと好き、だから。




嬉しそうに微笑んで


頷いた泣き顔にそっと唇を寄せた。




to remind





fin

くゆる様へ


コトノハ1万フリリク企画

2013/7/2 茅杜まりも



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