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to remind[2/6]

「…そうですか、お友達だったんですね」

いや、あのね?

正直言っちゃえば、アレだよ。

友達以上、…未満つぅか?

街歩けば、お互いに目で探しあって?

見つけたら嬉しくなったり、とかァ?

久々にアレだよ?銀さん、ちゃぁんと恋愛してたんだよ?

知ってるはずだろ?本当は…。

だけど。

「本当にごめんなさい、友達のことも忘れちゃってるなんて…」

項垂れてしまう花奈に何も言えなくなんでしょ?

「気、気にすんなって、オレも昔ちょっとだけ記憶失くしたことあんだわ。でも、何か知らないけどすぐ戻ったぜ?まぁ、きっかけとかあるんだろうけどよ」

慰めになっかもしんねェと覗き込んだ花奈の顔は、ありがとう、と微笑んだものの。

「で?仕事はどうしてんだ?」

「休暇中です、身体は平気だから行きたいんですけど、社長が頭のコレが取れるまでは休んでてって」

まァ、事務方だしな、頭正常に働かなくちゃ仕事になんねェだろうしな。

「ふぅん?休みか、だったら今から銀さんと」

「銀さん?」

「そ、銀さん。花奈はそう呼んでた」

「銀さん…」

噛み締めるようにオレの名前を呟く、それで何かきっと記憶を呼び覚まそうと。

「で、今から」

「そう!!今から土方さんとここで待ち合わせしてるんです」

「ハァ?!」

何で土方くん?え?何で?

「おっ、悪ィな、待たせてよ、花奈…と、万事屋?」

背後に止まったパトカーから、見知ったあの顔が降りてくる。

「…最近は女をデートに誘う時も、税金で賄っちゃうんですかねー、国家公務員はやっぱ違うねー、やることがえげつないねー」

「テメ、何いきなりケンカ売ってきてんだよッ、行くぞ、花奈」

こんなのに構うなとばかりに花奈の肩を抱き助手席へと促すヤローの手が。

気に入らねェ。

「花奈、ダメだからね?その人警察の服着た悪人だからね?顔見てみ?瞳孔開ききったアブナイ人だろォ?」

「銀さん、今から私現場検証に行かなくちゃいけないんですよ」

現場検証?

「そうだ、だからテメエみてェな暇人に構ってる時間はねェ」

「…あ、っそ。現場検証、ね」

…何かオレ格好悪ィ…。

クシャッと頭を掻きながら、ニヘラと笑って誤魔化した。

「でも花奈、土方くんのことは覚えてたんだ」

…だって、記憶失くしたのに何か親しくね?

「事故の時、現場に居合わせてたんです。入院の手配から、諸々土方さんにお世話になって」

アァ…一番心細い時についていてくれた人間って、ワケですかー。

全部忘れてイチからのリセットの時に。

花奈を労わって、付き添って、記憶に強烈にインプットさせた王子様ってワケですかー。

花奈に忘れられたってだけでも落ち込むには材料揃いすぎてんのに。

何でテメエはそれに追い討ちかけてくれんだよッ!!!

オレの気持ちにはお構いなしにパトカーは発進していく、助手席の花奈はオレに軽く会釈なんかして。

めちゃくちゃ他人みてェだろ…。

「…忘れられるってのは、酷なもんだな、おい」

自分もきっと周りの人間にそんな思いをさせてしまったのだろうと思うと、今更ながら申し訳ない気持ちにもなって。

そして、花奈のことを思えば不安にもなった。

…アイツの記憶、戻らなかったら、どうなるんだ?

つまりは今ゼロの状態なわけだ。

いや、顔見知り程度、オレの名前と顔は覚えてくれたはずで、多分新八や神楽よりかはちょっと抜きん出てる。

いや、比べるとこ違くね?

つまりは、アレだ。

オレが今、花奈の中で2ぐらいだとしてだ。

土方くんは、とっくに50とかいってんじゃね?コレ…。

…んなの、やってられっかよ!!!

大体、記憶失くなる前のアイツとオレは絶対、気持ち通じ合ってたはずなんだよ!

後、もうちょっとしたら、花火大会にでも誘って、そんで。

…アァ、マジかよ、もうッ!!!!

…絶対オレが。

オレがお前の記憶、引き戻してやるッ!!!!




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