sugary play[5/5]
謝ろう、謝っても許してくんねェかもだけど、とにかく謝れ、オレ!!!
もう、店まで着いちまったかもしんねェ、ボヤボヤしてる暇なかったのに…。
が、角を曲がった先に、ヒョコヒョコと足を引き摺って歩く花奈の姿があった。
見れば、鼻緒の取れた下駄を片手に持ち、片足は裸足で歩いている。
「花奈っ」
振り返ったその顔はやっぱり涙に濡れていて。
「ごめん!!!!」
駆け寄ってそう謝れば、別にいい、と膨れる。
イヤだって、こんなんで花奈とケンカ別れみたいになんの…。
「銀ちゃんは、私が土方さんとくっつけばいいってそう思ってるんでしょ?だけど、私土方さんとはただの友達だから銀ちゃんが思うようにはならないから!!!」
尚も歩くその裸足が痛々しくて。
つい、抱きかかえる。
「ぎ…お、降ろして!!」
「店までだ…ちょっとだけ我慢しろって」
泣き顔の花奈がオレから目を反らして唇噛んでるのがよく見える。
「…そんなつもり…なかったんだって」
「え?」
「だから、お前と土方くんがよ?くっつけばいいなんて思ってなかったんだってば」
「!!じゃ、じゃあ何であんなこと!!」
「…ノ、ノリ?」
花奈が目を丸くして、降ろしてと冷たい顔で言った。
「嘘だって…ノリじゃなくって」
「何?」
「…あぁ、だからよォ、もう…いいや、これで最後な」
「ん?」
覚悟、決めた。
もうこれで最後だ、花奈の近くにこうしていられんのも。
「ヤキモチだ、ヤキモチ!!!土方くんと花奈がな、あまりにもお似合いだったからよ、銀さん妬けたわけ!!めちゃくちゃ妬けたわけ、な?そういうこと!!」
「銀ちゃん?」
首を傾げる花奈にオレはため息をついた。
「まだわかんねェかなァ?銀さんさ…、アンタのことずっと好きだったんだよ」
花奈の顔を見ずに真っ直ぐ前だけ見て、そう言い放つ。
店が見えてきた。
「悪ィね、だから、さっきの八つ当たり…。ホントごめん。でな?もうアレいらねェからお菓子とか糖分な?花奈の顔見んの銀さんツライしね」
ヘヘッと笑って、花奈を店先に降ろした。
「じゃ、まァそういうこと、で」
そういう、ことで?
着物の袖が何かに引っかかって前に進めない。
振り返ればそれが泣き顔の花奈だってことにすぐに気付いた。
「…もう、いらないって…言わないでよ」
「あ?」
「何で?私の返事いらないの?私だって、私だってずっと銀ちゃんのことがね、大好っ」
泣き声を塞いでやる。
全部聞かなくても、わかったから。
…やっぱ甘ェ、お前全部甘ェんじゃねェの?
その甘さにオレァとっくに溺れてて抜け出せねェんだよ。
「ゴリラのアレ、終わったら。また茶飲んでけよ?」
そう笑えば、
「私だってずっとそうしたかったんだよ?」
…寂しいのはオレだけじゃない、そう教えてくれたオレの糖分。
甘い甘い恋の始まり。
fin
翡翠様へ
「コトノハ」茅杜まりも 2013/6/25
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