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sugary play[3/5]

1年半ぐらい前だったな。

「この度、そこでお菓子屋さんを開くことになりました、本日はご挨拶に」

と小さな箱にマドレーヌ入れて挨拶に回ってきやがった花奈に。

トクンと脈打つ鼓動。

…お菓子を作る職人だからかバニラエッセンスみてェな甘い匂いを纏わせて。

同じくらい甘い笑顔で、玄関に立ってた花奈に。

一目惚れした…。

「ちょ、超うめぇわ」

いきなりマドレーヌがっついて感想述べたオレに、嬉しそうにありがとう、と笑った顔に益々惹かれて。

「茶飲んでかね?」

誘った万事屋の中にある糖分の額縁見て、オレがいかに糖分を愛しているかわかってくれたようで。

「だったら、試食品とかお客様に出せないケーキの端っことか食べてくれません?」

という有難すぎる申し出をすぐに快諾してご近所甘いもの付き合いが始まって…。

花奈の菓子はホンット美味いからね、すぐに人気出ちゃったしね、あのチンピラ警察24時の贔屓にもなっちゃったしね?

いつの間にかニコ中まで花奈の側にいやがるしねェェェエ?!

「銀ちゃん、ウルサイね、鼻息止めろヨ」

「うん、何かスンスンうるさいです、銀さん」

…うっせー、うっせー、うっせー、どんだけ今銀さんが傷ついてるかなんてわかってないでしょ、子供たち!!

…報われねェ。





「ハイ、銀ちゃん」

「ん、いっつもサンキュ」

って、今日の多くね?

「あ、昨日の土方さんの失敗ケーキも入ってるの、とはいえ、形だけだからね、悪いの!味は保障するから」

「あぁ、あ、っそ」

…ケーキにゃ罪はねェけどな、ヤローには罪がある、あるな、絶対!!

「銀ちゃん?」

「あ?」

「何か元気ないよ?」

心配そうに覗き込むその大きい黒目がちな目。

「…な、何でもねェよ?心配すんなって」

本当は抱きしめたい気持ちを花奈の頭を撫でることで誤魔化す。

…こうしてもう一年半ですよ、オレどんだけ意気地なしなの?

振られるの怖ェって何、コレ?

振られたら甘いもん食えなくなっから?

いや、違うね。

この甘い笑顔に拒否られんのが、めちゃくちゃ怖ェつぅの!!

「あ、ゴリラのケーキ、何なの?どんなのになったの?」

「バナナだよ、局長さん大のバナナ好きみたい」

「やっぱゴリラじゃん、なァ」

「や、失礼だって、銀ちゃん」

言いながら花奈も笑ってる。

こうして笑い合ってんのが、すっげェ幸せ、だからよ。

「今日も来んの?大串くん」

「うん、何だか張り切ってるの、多分負けず嫌いなんだろうね、ケーキが膨らまないのが悔しいみたい」

思い出し笑いをする花奈に心が痛む。

今日も、じゃあ茶飲めねェじゃん…誘えねェじゃん。

「…銀ちゃん?」

「あ?」

「…ううん、何でもないっ!!また明日ね?」

「おう」

見送りは二階から、だってオメエを待ってるヤツがいるしなァ。

「スンスンうっせーって銀ちゃん」

「いっそ、鼻にテイッシュでも詰めてくれません?TVの音も聞こえないですから」

スンスンじゃねェから、最早グスングスンだから、膝抱えて泣いてるのに気付いてくれないの?君たちィィィ!!!!






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