sugary play[1/5]
「アレェ?!」
前から歩いてくる見覚えのある姿に目を凝らす。
花奈と…大串くん?
…アレ?
ツキンと痛む胸。
「銀ちゃぁぁぁん!!」
花奈が手を振っている。
その顔には満面の笑顔を貼り付けて。
「おう、今日も元気いいなァ、花奈。どこ行くんだよ?」
まるでその隣の黒い物体は目に入ってない体で。
「今から屯所にお伺いなのっ、局長さんのね誕生日のケーキの希望を聞きに」
「へェ、ゴリラって誕生日パーリーすんだ?」
「オイッ!!!」
あ、突っ込んできやがった、この人…あァ、何か今日はいつも以上にウゼェんですけどォォォ!!!
「いたんだ、大串君、いいねェ?誕生日ケーキの御用聞きのお仕事ですかァ、誕生日ケーキも税金で作るんでしょ?いいねェ、ヤクザな商売だわ」
「最初っから見えてやがったくせによ、税金なわけねェだろ、俺の財布から出すんだよ」
「へェ?わざわざ、花奈に頼んで?いらないでしょ、ゴリラだもの、バナナ積み重ねてあげたら喜ぶでしょ?」
「近藤さんな、アレでも人間だから、ゴリラじゃねェから」
冷静にいつもの突っ込みが入る。
…ウゼェ、だってゴリラごときの誕生日に花奈の手作りケーキだなんてよ?
「銀ちゃんの時みたいに、3段重ねとかにした方がいいのかなぁ?」
ポワァァンと嬉しそうな顔で花奈はそんなこと言い出すし。
「土方さんはそれを局長さんの誕生日プレゼントになさるんですよね?」
「あぁ、そのつもりだが」
「だったら、土方さんが作りませんか?それなら材料費だけで済みますし!!」
「へ?」
「あぁ、いいねェ、それ。だったら花奈の手煩わせることもないしねェ」
ニヤリとほくそ笑むオレをギロリと睨みつけるマヨラ星人。
「勿論、私が教えますよ?私の仕事終わりにですが、工房へ来ていただければ一緒に作ります、どうですか?」
…ナニソレ!!!
「…一日や二日で出来るもんか?」
え、ちょっと作る気?
「う〜ん、もしよろしければ誕生日まで何回か通ってくれませんか?最初は歪なものしかできないかもしれないですしね?」
エェェェ?
「ダメでしょォ?大串くんめちゃくちゃ忙しいし?あ、あれだ、何なら銀さんが作ってやんよ、バナナケーキだろ?」
「わかった、今日からでいいか?」
え?
「はい、じゃぁお待ちしますね、まずは局長さんがどんなのが好みかリサーチしに急ぎましょうか」
え?
「よし…よろしく頼む」
え?
「ハイ!!素敵なの作りましょうね」
見えてない?銀さんのこと見えてない?
大串君と笑いながら去っていこうとする花奈に泣きそうなんですけどォォォ!!
「あ、銀ちゃん、またねっ!!」
…また、ね、ですか。そーですか。
力なく手を振るオレに背を向けて歩く二人を見れば。
…似合ってんだよ、な。コノヤロー!!
花奈可愛いしなァ、性格いいしなァ…チッ。
振られた気分なんだけどォォォ…。
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