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さよならなんかは言わせない[3/6]

「…ハ?」

新八が受けた仕事。

荷物を残したまま部屋を引き払ったという女性の部屋を片付けてくれないか、というその部屋の大家からの依頼だった。

連れてこられたその部屋は、たった一度銀時が訪れたあの部屋。

花奈の部屋。

「全部捨ててくれていいそうなんでね、よろしく頼みましたよ」

「はーい」

中に入って一足先に仕事に取り掛かる神楽と新八。

けれど大家が部屋を後にしようとするのを銀時は引き止める。

「…、あのー、この部屋の主って」

「そういった事は個人情報を扱う私どもにとっては守秘義務でして」

「今日の依頼料半分にしてやっから、何でこの部屋引き払ったのか教えろ、コノヤロー!!!」

ダンッと大家を壁に押しつけ睨みつけると。

半分という料金設定に大家も頭の中で計算を始めて。

「…、事件に巻き込まれたんですよ」

やれやれ、ともったいぶって口を割り出した大家だが。

「事件って何だよ、全部言えッ!!料金ゼロにしてやっから!!!」

「っ、何でもこの部屋の女性に恨み持ってた男が帰りを待ち構えてたようで。襲われかけたそうですよ、幸い女性の悲鳴を聞きつけて隣の住人が駆けつけてくれて事なきを得たようですがね。ただ残念なことにナイフで襲われたんで顔にザックリ傷ついちまったそうでさァ。」

故郷に帰るって言ってましたよ、と渋々全ての話をし終えた大家が。

「ところで料金は」

「アァ?!いらねーって言ってんだよ、それよか故郷ってどこだ?!ン?!」

「そこまでは知りませんよっ!!」

「じゃあ何の恨みがその女にあったって言うんだよ?!」

「私も詳しくはわかりませんよ!ただ、その捕まった男は少し前に女性が警察に突き出した男だったって聞いたような、聞かないような」

どっちだよ、はっきりしろよ!とギリギリするけれど。

…多分、花奈を襲ったのはあの時の下着泥棒のオッサン。

「引き払うって言ったのは昨日か?」

「そうですよ、もういいでしょう?私が知ってることは全部話したんですから。後は仕事ちゃんとお願いしますよ」

…またアイツ怖い思いしたんだな…、クソッ。

大方保釈金でもたんまり払って出てきて。

腹いせに花奈をまた襲ったんだろな。

そこまで気が回らなかった。

とッ捕まえて引き渡して、それでオレの仕事は終了だなんて…。

「銀さん、コレ!!」

新八がまだ玄関先で立ちすくむ銀時に差し出したのは一枚の写真。

「花奈さんの部屋だったんですね…」

そこには嫌がる銀時の腕に絡まるようにしてピースサインを出す花奈の笑顔。

新八に無理やり撮らせた一枚だった。

…もうこんな風に笑うこともできねえんじゃねえの?

「銀さん?」

「悪ィ、新八。神楽と二人でココ頼むわ」

「ハイ?」

「全部ここの荷物万事屋に運んでおけ!!」

「銀さんは?!」

「…、ちょっとな」

新八から写真受け取ってそれを懐に仕舞い込むと。

「万事屋で待ってますね」

祈るような顔で銀時を見上げた新八と、部屋の中から同じような顔をした神楽もこっちを見ていて。

多分二人とも大家の話は聞こえていたのだろう。

「…いってくらァ」

そう言ってドアを閉めた瞬間、すぐさま階段を駆け降りた。


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