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ずっと、ずっとね…3[3/5]

「飲めるがか?」

温かいココアを淹れてくれた辰馬がソファーに座り込み毛布に包まりながら未だにヒックヒックと鼻を啜る私の横に座る。

「…泥棒だと思ったんだから」

ブスッとそれを受け取って一口啜る。

「驚かしてすまんかったのう。。花奈のかーちゃんから、花奈が元気なかったから学校で何かあったがかってわしに電話があったちや」

「…そうなの?」

「それからさいさい花奈の電話に架けても出んし花奈の部屋見ちょってもずっと電気は消えちょるし」

言われて携帯見たら思い切りマナーモードだし…。

「だ、だからといって何で二階から?!普通は玄関からピンポーンでしょ?!常識でしょ?!」

「近いからやか」

「…」

悪びれもせずそう言ってアハハハハーと笑った辰馬に呆れる…。

…昔から、だものな、辰馬がうちに来る時は十中八九私の部屋の窓からだった。

常識、とかそんなの通用しないんだよね、うん。

「ちゃんと戸締りせんとダメろう!誰かが夜這いにでも来たらどうするがか!!忍び込んだのがわしじゃったから良かったもがを」

ちょ、どの口が説教するのかな。

泥棒じみた真似しといたのは自分でしょうに。

「…辰馬以外来ないわ。あんなとこから」

嫌味交じりの私の言葉にも。

「…まァそうじゃのう」

アハハハーといつものように笑っている辰馬を見ている内にどうにか涙も引っ込んでいく。

「風邪ののうはどうなが」

私の額に手を置いてフンフン言っていて。

「ちっくと下がっちゅうようだな」

…そういえば身体楽になってる。

体温計で計っても37.5、昼間よりはずっといい。

もう大丈夫そう、と安心したのに。

「はやちっくとってところうな」

「えっ?!ちょ」

「ちゃんと布団でねよらんと治るもんも治らんきに」

よっこらせと、右の肩に私を担ぎ上げそれからもう一方に布団と毛布を担いで階段を上がりだす。

「危ないっ、危ないって!!降ろして、辰馬」

「動くと落ちるぜよ」

降ろしてはもらえないようで、言葉とは裏腹に嬉しそうに笑う辰馬にしがみつくしかない。

「飲み物は何がかまんろうか?ちっくと待っとおせ」

ベッドに寝かされて布団を整えられて。

それから甲斐甲斐しく携帯取りに行ってくれたりタオルやアイスノンや飲み物なんかも用意されて。

さすが幼馴染、昔から出入りしてるとどこに何があるかまで把握してる。

…お母さんみたい。

何だかホッとして笑ってしまうと気付いたのか辰馬が不思議そうに私を見ていて。

「どうして笑っちゅうなが?」

「…別に」

あんなに心細かったのに。

辰馬がここにいてくれるからホッとして、だなんて言えないや。

「…さっき」

「ん?」

「さっきわしの名を呼きくれちゅうか?」

「は…?」

さっきって、いつ?

考えこんだ私のベッドに腰を降ろしてもう一度熱を測るように私の額に優しく手を置いて。

「わしば泥棒と間違うた時じゃ!!助けて、辰馬ってゆうたにかぁーらん?」

「…い、言ってない!!!」

思い出した、言った、確かに言ったよ、私。

恥ずかしさに目を背ければ辰馬は反らさせないように覗き込んできて。

「嬉しかったぜよ」

ふっと目を細めて微笑んでいて…。

「…あこで高杉の名前呼ばれたちわしゃ泣いてたろうな」

アハハハと渇いた笑いに何も言えなくなる。

違うんだよ、って。

高杉とはそんな関係じゃなくって。

「幼馴染ってのはいいもんじゃのう。花奈に助けば求められる」

…、辰馬…。

「やきわしゃずっと花奈の幼馴染でおりたい。高杉とは別れたちほきしまいじゃろうけど、わしは幼馴染じゃから遠慮のう側におられるきに」

「…ん…」

うん、そうだね。

きっと超えちゃいけない線が私と辰馬の前にはずっとあった。

超えたら切なくなったり悲しくなったりする。

だから私たちは超えちゃダメ、ねえ、そういうこと、だよね…?





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