first love[2/4]
「花奈ちゃんさ、彼氏いるの?」
「ハァァァ?!」
驚きすぎてシャーペンに力が入り芯がバキッと折れてしまう。
「さっきから一体何なの?何が知りたいのよっ?!」
「だからァ、花奈ちゃんに彼氏がいるか?もしくは好きな男がいるかどうか」
うっ…。
「…、いない」
ドギマギしながらそう答えると。
「良かったァァァァ」
なんて満面の笑み浮かべられたら、何で?なんて少し期待もしちゃうわけで。
「っ、何が良かったの…?」
おずおずと目の前の日焼けをしまた一段と逞しくなったように見える彼を見上げると。
「C組の斉藤って覚えてる?」
「?あの、アフロの?委員会の最中いつも寝てる人?」
「そうっ!!実はあれオレの幼馴染でさ。で、頼まれたんだよね、花奈ちゃんに彼氏や好きな人がいるのか聞いて欲しいって」
話の途中で近藤くんが言おうとしていることがわかってきて。
スウッっと火照っていた頬から温かみも消えていく。
バカみたい、何期待しちゃってんだろ。
近藤くんが見ているのはお妙ちゃんだけってわかりきってたのに。
「斉藤ってさ、ああ見えてホンットいいヤツで!あ、お人よしっていうの?そういうやつなんだよ、わかりづらいけど」
お人よしにお人よしって言われる斉藤くんは確かにいい人そうだけれど。
でも、ね。
「斉藤がいつも言うの、花奈ちゃんが可愛いって。だからオレも意識して花奈ちゃん見たらさ、斉藤の言うとおり可愛いんだよね!!あ、お妙さんは美人系だけど花奈ちゃんはアイドル系?可愛らしいって言葉が本当によく似合うし」
…嬉しく、ないよ。
「一度さ、斉藤とデートしてやってくんない?それで気に入ったらアイツと」
「付き合えって?」
「そう!!って付き合えって命令じゃないよ、アイツ本当にいいヤツで、だから絶対オススメだから」
…友達想いのいいヤツはあなたでしょう。
ついたため息に気付かずに近藤くんは尚も斉藤くんのいいところを褒めちぎり私に推薦してくるから。
「…いいよ」「え?」
「だから付き合ってもいいって言ってるの」
だってあなた以外なら誰でも同じだし。
「明日から二学期だし、放課後一緒に帰ろうって伝えておいてくれる?」
「ちょ、花奈ちゃん?そんな簡単に?!」
「だっていい人なんでしょう?近藤くんの言う通り」
「そりゃまァそうなんだけどォ」
こんな重大なこと、簡単に決定しちゃっていいのかな?とガシガシ頭を掻く近藤くんの。
もう片方、机に置かれている手に自分の手を重ねる。
「ッエ?!」
ギョッとした顔でその手と私を見比べていて。
「花奈、ちゃん?」
女子に免疫のない近藤くんは物凄く焦った顔をしているけれど。
「付き合ってもいいよ、近藤くんの顔に免じて。だけど私のお願いを聞いてくれたら」
「お願い?」
「ん、聞いてくれる?」
「っ、オレにできることなら何でもっ!!」
ゴクンと唾を飲み込んで真剣な眼差しをする近藤くんは。
今きっと斉藤くんのために、願いごとを聞いてくれるんだろうな。
バカな近藤くん。
「…キス」
「え?!」
「キスしてくれない?近藤くん」
「…」
あ、固まった。
「近藤くん、聞いてるの?!」
重ねた手を揺すると近藤くんはハッと我に返ったようで。
「…どうも最近耳の調子が悪いのかもしれない。花奈ちゃんがとんでもないことを言っているような気がしてさ。ガハハハハハ」
…バカだ、やっぱ。
バカにはどうせ話も通じない。
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