陽だまり2[2/4]
コンコンと響く病室の扉をノックする音。
「はい」
十四郎さんにしては少し早いかも、と思った先にいたのは。
「お父様?!」
久々に見た父の顔は少しやつれている。
心配をかけてしまった…。
「すぐに駆けつけてやれないですまなかった」
心配そうなその顔は小さな頃から私が寝込むたびに見せていた顔。
「お父様がご出張中なのは存じておりましたから。それにもう平気ですよ」
笑って見せると、少しホッとした顔をしていて。
「土方くんは?」
「今日はお仕事できっとお昼から来てくれますわ」
「…うまくいってるのか?」
きっと、ほんのちょっと私の声が弾んでいたのだと思う。
だって。
彼は毎日、私のところに来てくれて。
時間が許す限り、側にいてくれて…。
人が変わったかのように、優しくて…。
「ええ」
それがほんのちょっと幸せすぎて不安だけれど、微笑んで頷いた。
何故あんなにも優しくなったのか…。
「お父様…前に」
「前に?」
「ええ、お見合いの話が出たとき」
首を傾げた父に思い切って聞きたかったことを。
『現在この男には女の影もない。だが、昔は』
「十四郎さんには昔、思う方がいらっしゃったのですか?」
「…何故今更そのようなこと」
ギクリとし濁そうとした父に。
「沖田隊長の、姉上様…?」
「調べたのか?!今がうまくいってるならば、それで」
…やっぱり…。
「調べたわけではありませんわ、耳に入ってきただけで…。その方は今どうされてるんですか?」
十四郎さんの側にいないということは、他の誰かに嫁いだのだろうか。
「…半年ほど前、亡くなったそうだ。持病の肺の病を患わせて」
「…、」
「花奈?」
「…そうでしたか…」
その後父が、二人は付き合っていたわけではないようだ、とか。
言っていたような気もするけれど。
合点がいった。
私の身体を気遣って優しくなったあの人は。
『病弱なとこだけは似てんじゃねえか?』
『あー、だからか…』
だから、でしたか。
あなたがいつも寂しそうなお顔をしてらっしゃったわけも。
私に優しくなったわけも。
全てわかった気がいたします。
昼から、十四郎さんが来る頃合を計って眠ったフリをして時間をやり過ごした。
時折私の額に触れて熱がないか、と確認する掌に。
私のためではないそれに。
寝たふりを気付かれぬように。
じっと身を竦めて彼が去っていくのを待って…。
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