俺は今、目の前でうずくまって泣く少女にどうしていいのか分からずにじっとつっ立っていた。ことの始まりは30分前、仕事が終わり家に帰ろうとしたら俺のクラスのみょうじを発見した。こんな遅くに何してんだろおーって思って後をつけたら、えっ?ストーカー?やっ、違うって、生徒が気になっただけだからァァァ!別に彼氏と会うんじゃ、ってつけてたわけじゃないからァァァ!やっ、もうほんと、勘弁してよォォォ!
そしたら、みょうじが変な奴らに絡まれてて、路地裏に連れてかれてたから俺が追い払った。ほらァァァ、俺ヒーローじゃん、かっこいいじゃんかァァァ!…で、今にいたる。
「あのさ、みょうじ…」
「ひっ、くっ…」
こういう時ってどうすればいいんだ。優しく肩とか抱いた方がいい?いや、逆効果か?えっ、キスとかしていい?駄目?えっ…死ね?
「みょうじッ…」
俺がみょうじの肩に触れようとしたその時…
「ひじっ、かたっ、く」
あっ、うん、そっか。多串君ね。うん、あっ、何か目の前がおかしくなってきちゃった。いや、気のせいだって、おい。えっ、失恋?やっ、違うって、別に全然悲しくねェし。
「みょうじ、今多串くんにメールしたから迎え来てもらおう」
「うんっ…」
俺はその時やっとみょうじの肩に触れることができた。
震える肩を抱き締めるのさえ躊躇う
(ばっ、泣いてなんかねェよ…)
END