「ケ、ロロ…」
地球が侵略されて何日の月日がたっただろう。私の喉からは絞り出したような小さな声しか出なかった。そんな小さな声でもケロロはちゃんと私に気づいてくれた。ケロロは私に近づくと無表情で目の前に立った。少しでもケロロに触れようと伸ばした私の手は繋がれた鎖によって邪魔をされて空をきる。
「ケ、ロロッ…」
私の声は震えて、目からは涙が溢れた。いつもみたいにあの小さい体を抱きしめることも、大好きなケロロに触ることさえ今の私には許されない。
「大人しくするであります」
やっと聞けたケロロの声は冷たくて、私の目からはまたポロポロと涙が溢れた。もうケロロが前みたいに私のことを名前で呼んでくれることもないんだ。ついこの間まで一緒に笑いあっていたのに。いつの間にか地球は侵略されて、地球人はみんな捕らえられてしまった。ケロロだって本気を出せば地球なんて一瞬で侵略できるということを思い知らされた。何で今までそうしなかったのか、私たちを油断させたところで一気に侵略する気だったのか。
「ケロロ、私ね…」
「ケロロ隊長と呼ぶであります!」「ケロロのことッ…」
「それ以上言うなッ!」
突然のケロロの大きな声にビクンと体を強ばらせた。目を見開いてケロロを見ると、ケロロの表情は険しかった。ケロロは私の口にゆっくりと手を当てるとさっきとは打って変わって静かな口調で喋りだした。
「我が輩は侵略者であなたは捕虜。それは言っちゃ駄目であります」
すごく悲しそうな顔でそれだけ言うとケロロは私の前から立ち去ってしまった。ケロロの頬に温かな滴がこぼれたのはきっと私の見間違いじゃない。
それ以上言うな。お前を側に置けなくなる。
(我が輩もッ、なまえを愛してるであります)
END
『ペコポンを侵略しないなら破壊するぞ』という話