「やあ」

学校の校門の影からヒラヒラと手を振りながら現れた男は私にいつもの貼り付いたような笑みを向ける。なるほど、さっきクラスの女の子が「校門にすっごいイケメンがいる」って騒いでいたのはこいつのことか。

「臨也…」

こいつは情報屋の折原臨也、顔はかっこいいが性格は人類最悪と言っても過言ではない。静雄はこいつを毛嫌いしているが私はそれほど嫌いでもない。臨也は時々こうやって校門の前で私が出てくるのを待っていることがある。

「一緒にかーえろッ!」
「アイス奢ってくれるならいいよ」
「オッケー」

とりあえず臨也を見る女の子たちの視線が痛いので私は校門を抜けて歩き出した。臨也もいつものふわふわした歩き方でついてくる。途中のコンビニで臨也にアイスを買ってもらい2人で並んでぶらぶら歩く。

「私に近づいたらまた静雄に怒られるよ?」
「いいのいいの、どうせ何もしなくても怒られるんだから」

そう言って臨也は楽しそうに笑った。その後のフォローをするのは私なんだぞ。

「でもさーシズちゃんも高校生の女の子に手出すなんて変態だよねー」
「“人類ラブ!”とか言ってあらゆる年代の女の人に手出してる臨也よりましでしょ」
「ふふふ…」

アイスを食べきりそこら辺のゴミ箱にゴミを捨てる。アイスを奢ってもらって何だが…こいつはどこまで付いて来るんだ。静雄に見つかる前にどこかに消えて欲しいんだけど。

「ところでさーシズちゃんのどこが好きなの?」
「は?」
「いやぁ、気になるなーって思って」

いつもの貼り付いたようなヘラヘラした笑顔で私を見るが目の奥が笑っていないことを私は知っている。

「人間らしいところ…かな」

私がそう答えると臨也は一瞬驚いたような顔をして、またいつもの笑顔に戻る。

「ははっ、シズちゃんが?人間らしい?あんな人間離れした怪力はどこを探してもいないと思うけど」
「確かに静雄の怪力や頑丈さは人間離れしてると思うけど、心の中は誰よりも優しくて綺麗だから」

臨也は心底つまらないというような顔をして「ふーん」とだけ呟いた。

「臨也は、どうしてそんなに静雄のことが嫌いなの?」
私の問いに臨也は少し考えて口を開いた。

「君を大好きなところ、かなぁ…」





愛情の裏返し
(じゃあ、私とはライバルね)(ふふふ…)





「いーざーやーテメェ!あれほどこいつに近づくなって言っただろォォォ!」

その声とほぼ同時にポストがすごい勢いで飛んできて、臨也がヒラリと華麗にかわし地面にめり込む。

「ははっ、シズちゃんに見つかったからそろそろ退散するよ。またねー」
「テメェ臨也!待ちやがれ!」

私は知っている、静雄に追いかけられている時のその嬉しそうな顔を。



END
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