どうしよう、彼の大事な人を平手で殴ってしまった。殴った右手がズキズキ痛む、それと同じくらい胸もズキズキ痛んだ。急いで教室を飛び出した私の背中に彼の怒鳴り声がぶつかった。走りながら彼の驚いた顔が脳裏をよぎった。もつれる足で辿り着いた先は屋上だった、給水塔の影に腰を下して膝に顔を埋めた。どうしよう、きっと怒ってる、嫌われたかもしれない…

「おいテメェ!」

急に聞こえた怒鳴り声にびくりとして顔を上げた。そこには何時もに増して眉間に皺の寄った怖い顔したあなたが立っていた。

「獄、寺くん・・・」
「10代目に手上げるたァどういうつもりだ!死ぬ覚悟できてんのかコラ!」

そう言うと極寺くんは私の横に腰を下した。言葉ではひどいこと言っときながら決して女の子には手を上げない。やめてよ、優しくしないで、いっそのこと殴られた方がましだよ。獄寺くんを横目でちらりと見るとやっぱりまだ眉間には皺が寄ってて今日中には眉間の皺は取れそうにないなと思った。

「おいなまえ、何であんなことしたんだよ」
「別に」
「テメェ理由もなく10代目殴ったてェのかよ!殺すぞ」

私の腕を掴んで言った。胸の奥がチクリチクリとした。獄寺くんに掴まれた腕がじりじり熱い、苦しい、きっと私の顔は獄寺くんより眉間に皺が寄っているだろう。私は俯いた顔を上げられなかった。

「ねえ…」
「あ゙あ?」
「獄寺くんはツナくんが好きなの?」
「はっ、ばっ、違ェよ!何言ってんだよ!」

そう言った獄寺くんは明らかに動揺していて、耳まで赤くなっていた。そんな顔するなんて卑怯だ…

「なっ、おまっ、何で泣いてんだよ!」

獄寺くんに言われて初めて気づいた。あ、私泣いてるんだ、どうりで鼻の奥がツンと痛いと思った。ああ、かっこ悪い、変な奴だって思われる。でも、泣きやまなきゃって思えば思うほど情けなくて涙が零れた。

「おい、泣くなって」
「煩いッ…」
「あ゙あ?」
「もお、やだッ、嫌い、獄寺くんも、ツナくんも、大嫌いッ…」
「なまえっ…」

ほんとにやだ、涙だけじゃなくて鼻水まで出てきたし。顔もきっと不細工だ、こんなんじゃ獄寺くんに好かれないのなんて当たり前だよ。分かってる、分かってるよ、ツナくんが悪いんじゃないってこと…





切ないのは誰の胸?
(もォ、リボーン!獄寺くんはただのクラスメートだってば!)





だってね、あなたのその時の顔がすごく切なそうだったから、私もその時の気持ちが痛い程分かるから。ツナくんのことは何でも分かるのに私の気持ちにはちっとも気づかないんだね?



END
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