「ねぇ、その髪の色って地毛〜?」
「うん、そうだけど」
「へぇ〜」
「絶対違うよね〜」
「お前その髪の色は何だ!うちは校則で洗髪は禁止だろ!」
「地毛?嘘をつくな嘘を!」
「はぁ…」
ため息をついて下駄箱から上履きを出した。高校ってくだらない。少しみんなと違うだけで仲間外れにされたり教師に目をつけられる。早くこんなとこ卒業して自由になりたい。
「おーす」
声をかけられて振り向くとそこには眠そうな銀八が大きなあくびをしていた。朝が嫌な奴に会った、と眉間にしわを寄せた。
「…おはようございます」
「ん?元気ねェな」
「別に…」
私はこの男が苦手だ。教師のくせにどこか抜けてていつも他の教師に説教されてる。そのくせ何故かやたら生徒には人気がある。
「そういやお前さぁー」
「はい?」
「その髪の色地毛ですか?」
「…そうですけど何か?」
私は大きくため息をつくとうんざりしたような顔で銀八を睨んだ。銀八は私の態度なんか全然気にしてないように靴箱から上履きを出し床にほおり投げた。
「ふーん、いい色だな。可愛い可愛い。もったいねェから染めんなよ」
銀八はそう言うとあたしの髪の毛をくしゃくしゃと撫でて上履きを履いて行ってしまった。私は初めてのことで呆然とその場に立ち尽くしていた。触れられた場所が熱くなるのが分かった。銀八が生徒から人気があるのが分かった気がした。
アン・ドゥ・トロワで恋に落ちよう
(いや、恋になんて落ちてないし!少し見直しただけだし!)
END