これから、このまま

安らぎ


……夢?
そう、夢を見たの。
……どんな?
子供の頃、フリオニールたちと遊んでた夢。

寝息を立てているフリオニールの横で、マリアは見ていた昔の夢のことを話す。
懐かしむように、大切そうに。
初めてそんな表情をみせてくれることが、ミンウにとっては嬉しかった。

マリアが話し終えると、ミンウの部屋は沈黙する。
フリオニールの穏やかな呼吸音が、空間を満たす。
マリアにとって、それは心を癒す聖歌とも成りうるほど。
高熱に苦しむ彼のために、彼女はひたすら看病をしていた。
咳もひどかったのだから、規則的な呼吸を繰り返している今はだいぶ落ち着いたのだろう。
彼が横になっているベッドの脇には、ガイが摘んできたらしい花が活けてある。

「君も、ガイも、フリオニールのことを大切に思っているんだね」
「うん、それに……」
「三人とも、大切に思っているし、思われてる」

マリアはこくりとうなずく。
幼なじみというよりも家族のように過ごした彼らだという。
三人の誰かに何かあったなら、自分のことを顧みずに相手に尽くすほどに。

「君たちは、とてもまっすぐだ。だけど、がむしゃらすぎてはいけないよ。相手のためのはずが、相手を傷つけかねないから」
「……はい」

子どもに諭すように、どこか願いにも似ているように、ミンウはマリアを静かに叱る。
それは、大人になれということではない。
互いを思っているから、思われているから、一番身近で大切にするべきものを忘れてほしくないのだ。

「さあ、ずっと看病してたんだろう?君も少し休みなさい」
「でも」
「私が見ているよ。それに、睡眠不足は体に悪い。肌にもね」

微笑みながら冗談めかしてみせる。
マリアは少しだけ頬を膨らませたが、すぐに笑顔で応えた。
そして彼女は力が抜けたようで、そのまま眠りについた。
どれだけ夢中になってフリオニールの世話をしていたのだろう。

今はゆっくり眠って欲しい。
夢の中でなら、また大好きな彼らとの遊びを楽しめるから。

そっと祈るように、ミンウはマリアの頭を撫でた。


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