これから、このまま

運命の傷


最悪だ。
なんでアンタと出くわすんだ。

「よお、スコール」

わざと明るい口調のサイファー。
余計に気分が悪くなり、目を逸らすと、サイファーが即座に反応する。

「なんだその態度は?風紀委員のオレに不満でもあるってか?」
「あるな」

即答。
若干、ムキになったような気がしないでもない。

「それ以前に、アンタに良い印象を持った記憶が無いな」
「なんだと?」

サイファーの目付きが次第に攻撃的なものになっていく。
しばらく睨みあってから、サイファーは言葉を続けた。

「…後で訓練施設に来い」
「どうしてそうなるんだ」
「お前に先輩への礼儀ってモノを教えてやる」

…まずアンタが礼儀を直すべきだろ。


「ほらよ!」
「く…!」

言われて来てみれば、躾と言う名の真剣勝負。
訓練とはいえ本気だ。
お互いのガンブレードがぶつかり合う。その度に、両者の気持ちが高ぶってくる。
日頃の相手への不満が溢れ、一層戦いを熱くさせる。
悪くない、と、スコールは思った。

スコールが仕掛ける。
ガンブレードを構え、サイファーに向かって走る。
瞬間、突然の炎。
サイファーが魔法を放った。
それをまともに受けて、スコールは吹き飛ばされる形になった。
それを見て、サイファーが笑みを浮かべる。
体勢を立て直す前に、サイファーはガンブレードをスコールの額目掛けて振り下ろした。

走る痛み。
視界に入った自分の血。
込み上げる、さっきまでと比べ物にならない、相手への怒り。

「うおおおお!」

すぐさま、怒りに任せて切り返した。
その刃は、皮肉にも彼の額にスコールと同じ、いや、左右反対の傷を付けた。

一瞬の出来事で、数秒間互いに動けなかった。

「くそっ!」
「!」

サイファーがまたも魔法を放つ体勢に入る。
次は飛ばされまいと構えたところで、

「お前たち!やめろ!」

施設に入ってきたSeeDたちに止められた。


…最悪だ。
先生にいろいろ忠告されたし、何よりアイツに傷を付けられたのが許せない。
これから先、この傷と仲良く過ごさないといけないのか。
今まで無かった、新たな傷と。
自分は望んでいなかったのに、他人の都合で自分の将来が振り回されるなんて…。

…もういい。疲れた。

自室のベッドで横になり、うずくまるような姿勢になると、髪がまだ痛みの引かない傷に当たって鬱陶しかった。
痛みはきっとすぐ消える。
でも、刻まれた傷はこれからも、俺に傷つくことのない未来を期待させてくれない。


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