束縛
意志の無いその瞳は、ただ静かに目の前の魔導アーマーを見つめていた。
「キミ達、この子に何かあったら許さないからね」
「はっ、ケフカ様」
「それにしても幻獣とはまた、面白そうですねー。ぼくちんも付いていきたーい」
狂喜に歪むその笑顔の真意が掴みきれず、ビックスとウェッジは小さく身震いした。
今回の任務は、ナルシェの幻獣の調査である。
その為とはいえ、恐ろしいほどの力を秘めたこの娘まで出すとは…人を傷付けてでも、手に入れたい力なのか。
そんな疑問を持っても答えてくれる人はいない。
俺たちは、帝国の兵士。
ただ、与えられた任務を遂行する、自分たちに求められているのはそれだけだ。
この帝国の、繁栄の為に。
ナルシェへの出立の時、見送る将軍達の激励の言葉は、決して優しいものではなかった。
誰もが、自分たちのことを戦いの駒としか思っていないようだった。
ただ、レオ将軍の、
『帝国の為の命である前に、自分たちの未来を選択する為の命であることを忘れるな』
その言葉は、自分たちはちゃんと意志のある人間だという確信を持たせてくれた。
共に行く、あの少女には届かないけれど。
一つの戦いの駒として。
一人の兵士として。
一人の人間として。
任務を成し遂げ、ここに帰ってくる。
だから。
「帝国に繁栄あれ!」