これから、このまま

なにもかも、みんな


何も、無い。
あの街並みも。
人々の笑顔も。
間違いなく、そこにあったのに。

「こっちだ!」
「走れ!」

目の前に広がるのは、真っ赤な地獄。
その炎の中を必死に掻い潜って、ようやくここまでたどり着いた。

見晴らしの良いこの丘に、子供の頃よく遊びに来た。
だけど、今ここからは、焼き払われた俺たちの故郷が嫌というほど良く見えた。

未だ逃げ惑う人々。
街を闊歩する帝国兵。

…どうして?
故郷を返せ。
俺たちの…居場所を、思い出を、安らぎを返せ。

「ひどい…」
「ウウウ…!」

無惨な光景に、ただ呆然としていた。
もう、何も、無いのか。

「いたぞ!」

黒い甲冑の兵士が襲いかかってくる。

「くそっ!」

レオンハルトがマリアを庇う。
俺も兵士に立ち向かう。
マリアとガイも、それぞれ武器を構えた。

まだ、失ってないものがあるじゃないか。
仲間がいる。
無くすもんか。絶対に。

帝国兵相手に、下手したら怪我するだけじゃ済まないかもしれない。
でも、俺は仲間を守りたい。
その為に戦うんだ。


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