短編 | ナノ
2

「どこへ行く」
「……プリ」

部活が終わり、片付けも半ばのところでそろりとどこかへ行こうとする仁王を視界の隅に認める。
ほぼ100%の確率で行き先はわかっているのだが、柳はどうしても言及せずにはいられなかった。

「まだ一仕事残っとるからの」

柳を一瞥したあと妙に含みのある言葉を残し、仁王は立ち去るべく身を翻す。
無造作に揺れる仁王の後ろ髪を見つめていると、不意に柳は挑発的な気分になった。

「そうか。では俺も同行しよう」
「え……」
「一人でやるより二人の方が早く方が付くとは思わないか」
「お、思わん!」
「そう遠慮するな」
「参謀……っ!」

途端に慌てだす仁王を制することもせず、柳は歩みを進めた。
背後で仁王の小さなため息を聞いたような気がして、柳は口元にうっすらと笑みを浮かべる。
瓢々とした普段の姿からは考えにくい今の仁王の姿こそが、彼の本来の性質なのかもしれないなどと、密かに心に留めておいた。


―――――


「これは、」

たどり着いて早々に柳は戸惑った。
気を取り直して数回深呼吸をし、ゆっくりと記憶を呼び戻す作業に取り掛かる。
図書館に向かうために通りかかったこの道で、偶然にも厄介なものを発見してしまったのはほんの数日前のことだ。
しかし、柳は忠告をしたはずだった。
それは相違ない事実なのだが。

「……ずい分居心地がよさそうだな」

瞬きを繰り返しても、目の前の光景は当然ながら変わることはなく。
安っぽいプラスチックの入れ物には、どこで調達してきたのか、缶詰の中身が開けてある。
それを夢中で噛み砕いているのは見覚えのある三毛猫で。
さらにその傍らには古布がぽつんと置いてある。
どう考えてもこれらは前回にはなかった。
とすれば答えは自ずと一つに絞られる。いや、実を言えば考えずともこのような結果になるのはわかっていたのかもしれない。

「なかなかじゃろ」
「……」
「苦労したぜよ。ここまで揃えるのに」
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