この日をこんなにも待ちわびていたのは、間違いなく初めてだ。むしろ少し前までは嫌だとも思っていたくらいである。行き交う生徒達は皆楽しそうにしていて、今なら僕にもその気持ちが分かる。またホグワーツで会うのとは違う、また違った感覚。いつもと雰囲気の違った彼女を見つけて、いつの間にか笑みがもれていた。
『 Lesson 06 初デートですよ。 』
「レギュラスお待たせ!」
「名前、おはよう」
「おはよう!ごめんね、待った?」
「待ってないよ。ほら、行こう?」
「うん!」
そんな会話がくすぐったくて、引っ張るように彼女の手を取った。デートだなんて初めてだから、少し緊張をしてしまう。平静を装いながら、いつも通りの自分を演じた。彼女の小さな手は暖かくて心地が良い。
「レギュラスはどこか行きたい場所はある?」
「特には…。あ、三本の箒には行こう。バタービール好きなんだ」
「レギュラスもバタービール好きなの?美味しいよね」
「三本の箒で初めて飲んだけど、甘くてすごく美味しかった」
あの甘い味を思い出して、彼女と一緒に飲みたいと思う。名前とホグズミードに行くの今回が初めてだ。これから彼女と何度もここを訪れる事になればいい。目の前に見えてきたホグズミード村は、相変わらずホグワーツの生徒達で溢れていた。
「ハニーデュークスに行ってもいい?」
「もちろん」
今度は名前に手を引かれるように、甘いお菓子で溢れている店内へと進んでいく。ハニーデュークスにはあまり来た事がなかったけれど、彼女のおすすめのお菓子でも買っていこうか。
「名前、何かおすすめはある?」
「砂糖羽ペンとか?」
「なにそれ、甘そう」
「大鍋ケーキは美味しいよ!」
「じゃあ帰ったら一緒に食べようか」
嬉しそうに笑う彼女のおすすめをたくさん買い物カゴの中に入れていく。それには甘そうでカラフルなお菓子がたくさん入っていった。2人で食べようと約束をして、会計を済ませお店を出る。それからは近くのお店をいくつか周って、三本の箒で休憩を取る事にした。
バタービールを2つ注文をして、開いている席に座る。マダムが持ってきてくれたバタービルを口に入れると、広がる甘さがとても心地よかった。
「レギュラスがバタービールを好きだなんて、ちょっと意外だな」
「そう?あんまり飲まないけど、好きだよ」
「結構甘いものも好きだよね」
「そうだね。
今度はパディフットの店にでも行く?」
「え!」
「冗談だよ」
とても驚いた顔をする彼女が可愛くて、面白くもない冗談を言ってしまった。あそこは恋人同士ばかりが集まる場所だと聞く。外観しか見た事がないけれど、とても入りたいとは思えないような場所だった。
「もう、びっくりさせないでよ」
「名前はああいうところは苦手でしょ?」
「レギュラスもね。
私は三本の箒のほうが好きだもん」
「パティフットの店に行った事は?」
「前に友達と少しだけ。カップルしかいないし、異様な雰囲気だしすぐに出てきちゃったけどね」
名前はあそこに行った事があるのか。彼女も行った事はないだろうと思っていた。その友達が気になる。女の子の友達だろうか、それとも。
「ちなみ女の子の友達だからね」
「…聞いてないよ」
悪戯っ子のように笑う彼女には、僕のポーカーフェイスも効果がないみたいだ。それが、なんだかちょっと悔しい。
「名前の事が好きだから、僕も嫉妬するんだ」
「ちょっと、…あんまりそういう事は外で言わないで」
「2人っきりの時ならいいの?」
「…レギュラスのいじわる」
耳まで真っ赤になる彼女を見て、僕は満足げに笑う。本当に彼女といると飽きない。
次も、その次も、こうやってまた名前とホグズミードでデートをしよう。その言葉に、彼女は嬉しそうに笑ってくれた。