暖かな柔らかい日差しが私の眠気を誘う。太い幹に背中を預けて、開いていた本に目を向けようとするけれど、だんだんと瞼が落ちてきた。
正午を少し回った時間、静かな中庭は絶好のお昼寝の場所だった。中庭は広く、遠く離れたところにちらほらと生徒が見受けられるくらいの人しかいない。隣に座る彼は、真剣な表情で目の前の活字を追っているようだ。
『 Lesson 05 いよいよ告白タイムです。 』
小さな欠伸をひとつ、このまま眠ってしまおうか。
「眠いの?」
「…ねむいよ」
「瞼が今にも落ちそうだね。変な顔してる」
レギュラスはくすくすと面白そうに笑った。人の顔を見て笑うなんて酷すぎるではないか。そんなに変な顔をしていたのだろうかと少し心配になったけれど、それを心配するよりもどうしようもない程眠い。
「レギュラス、私寝たい」
「名前寝ないでよ。話しをしよう」
「無理だよ。だってこんなにポカポカしてて気持ちがいいんだもん」
最近はなんだかいろいろ考え事をしてしまって、睡眠時間が少なくなっていた気がした。これも全部、隣にいるレギュラスのせいだ。そうに違いない。
「どうしたら起きててくれる?」
「…お話はいつでもできるでしょう?」
手に持っていた本を閉じて、芝生の上にそっと置く。また小さな欠伸を一つ。ああ、本当に眠い。私はさっきから眠いしか言っていないような気がする。
「ねぇ、名前聞いて」
先程とは違うレギュラスの声色に不思議に思いながらも、ちらりと彼を見遣る。ジッと私を見つめるレギュラスを、さらに不思議に思った。
そして彼は、その口からとんでもない言葉を発したのだ。眠気を吹き飛ばすような、そんな言葉を。
「好きだよ」
「…え?」
今の私は、さぞ間抜けな顔をしている事だろう。
「名前の事が好きなんだ。僕と付き合ってくれる?」
どうしてこうなったのだろうか。突然すぎやしないか、と問い掛ける。
「…ちょっと待って、レギュラス何を言ってるの?」
「そのままの意味だよ」
少しむっとした顔のレギュラスに、珍しい顔をするなと思った。そんな表情はあまり見た事がない。
「名前も僕の事が好き?」
彼のその言葉を、自分の中でもう一度繰り返す。その答えはすぐに出るのに、自分の言葉にすると恥ずかしすぎて、死にそうになる。
私、レギュラスに告白されているんだ。やっと頭の中で理解した時には、もう既に私の顔は信じられないくらい赤くなっているのだろう。そんな私を見て小さく笑う彼は、相変わらずかっこいい。
「好きだよ」
そういって優しく私を抱きしめた彼が、私も好きで好きで仕方がないんだ。
「私も…、レギュラスが好きです」
私の言葉に、抱きしめる腕の力が強くなった彼が、どうしようもなく愛しい。