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いつもの自主練を終えて着替えを済ませ、先輩達と一緒に部室を出る。今日は肉まんを奢ってくれるらしい。だんだんと寒くなってきたこの季節はもうこの時間になると少し肌寒い。先輩達の後ろを、いつものように大地と旭と並んで歩いた。

「もう秋ってかんじだなー」

「少し寒いよな」

ふと今日のお昼休みのことを思い出した。そういえば大地は彼女と同じクラスだったっけ。

「大地のクラスにさ、苗字さんっている?」

「苗字?…いるけど、スガお前あいつと仲良かったか?」

「いや、この間怪我したときに手当てしてもらってさ」

「あー、そういえばあいつ保健委員だったか。
手際良いだろ?苗字の手当ては」

「あ、俺も苗字さんにテーピング巻いてもらったことある。
すっごい上手だったよ」

「なんだ旭も知ってるのかよー。
すっごい綺麗に巻いてもらってさ。びっくりした」

どうやら大地と苗字さんはそれなりに仲が良いらしい。よく話をしているような、そんな雰囲気だ。旭も手当てをしてもらったことがあるなんて、まぁ保健委員だから当然といえば当然なのかもしれない。
先輩に買ってもらった肉まんを頬張りながら彼女の顔を思い出す。大人しそうな子だと思っていたけれど、もしかしたらそんな事もないのかもしれない。もう包帯の解かれた自分の足を見て、なんだか少し胸が騒ついた。



いつもと同じ時間に学校に着いて、いつもと同じようにSHRが始まる時間まで親しい友達とたわいもない話をする。私の席は廊下側の後ろから二番目。後ろの方だし良い席ではあるけれど、冬になれば寒くなってくるだろう。冬になる前に早く席替えがしたい。
時計を確認してそろそろ自分の席に着くと、前の席に朝練が終わったのであろう彼がやって来た。私の前の席の彼は、だいたいいつもこの時間に教室に入ってくる。

「おはようー、朝練お疲れ」

「サンキュー。はよ」

バレー部である彼は部活が忙しいのだろう。朝から練習だなんて大変だ。その後すぐに入って来た先生がSHRを始める。SHRは今日の予定の確認や連絡事項をしたりなど、10分くらいの僅かな時間だ。

「そういえばさー、菅原の手当てしてくれたんだって?
ありがとうな」

「…スガワラ?」

「ほら、一昨日の放課後に保健室に来ただろ?」

身体を少しこちらのほうに傾けた彼は、小さめの声で私に話しかけてきた。
一昨日の放課後、保健医が職員会議でいなかった時か。そういえばその時来た男の子がそんな名前だったような気がする。昨日隣のクラスで見た、爽やかなイケメンくん。

「ああ、菅原くんね。
足を捻っちゃったみたいだけど、大丈夫だったのかな?」

「おー、もう治ったって言ってたよ。
それに苗字の手当てを褒めてたし」

ニヤリと笑った彼の言葉に、少しだけ嬉しくなった。誰だって褒められるのは嬉しいに決まっている。

「嬉しいなぁ、それに良くなったならよかった」

「な。かるい怪我でよかったよ」

「澤村と菅原くんは仲良いんだね」

「同じ部活だからな」

「へぇ、そっか。じゃあ、菅原くんもバレー部なんだ」

菅原くんもバレー部だったとは。そういえば、何部だとかどうして怪我をしたのかとかは聞いていなかったような気がする。確かに肌も白いし、室内競技だとは思ってはいたのだけれども。
私はバレーボールを観るのが好きだ。ポンポンと得点が入っていくから分かりやすいし、皆で繋いで得点を稼ぐチームワークというかそういうのが観ていてとてもワクワクする。だから、彼がバレーボールするところも少し観てみたいなぁ、なんて。

「また怪我したらよろしく頼むよ」

「そんなに怪我しないのー」

「ハイハイ、気をつけマス」

いつの間にか先生の伝達事項も終わり、そろそろチャイムが鳴る時間だった。退屈なSHRが終わればすぐに一限が始まる。今日の最初は現代文だ。眠くならないように気を付けなければ。
私も澤村や菅原くんみたいに何か一生懸命になれるような、そんな高校生らしい青春を感じたい。ふと、そんな事を思ってしまう。また今日も、いつもと変わらない退屈な学校生活が始まる。何か私も、ドキドキするような青春がしたい。そんな乙女チックな事を思ってしまうのは、きっと私だけじゃないはず。だって、華の女子高校生だもの。