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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「二口と苗字じゃん。おはようー」

「あ、おはよう」

「はよー」

ついにこの日がやってきてしまった。文化祭練習初日。いよいよ、今日から白雪姫の演劇練習が始まる。たまたま途中で会った二口くんと一緒に教室に入ると、そこは天国のように涼しかった。クーラー最高である。
午前中といってももう既に外は暑い。もう教室には半分くらいの人が集まっていた。おそらく全員は揃わないだろう。

「とりあえずキャストのみんなが集まったら読み合わせしまーす!」

そんな高橋さんの声に、何気なくため息がもれた。暑い中歩いてきた身体は、まだ少し火照っていて気持ちが悪い。

「ため息つくなよー」

背中に少しの衝撃と、陽気な声が聞こえる。振り向けば案の定、さっきまで隣にいた二口くんが後ろで笑っていた。

「背中、いたい」

「そんな強く叩いてねーし」

彼の右手には、まだ新しい綺麗な台本が握られている。私もそれに合わせて鞄から台本を取り出し、彼の隣に並んだ。

「ちゃんと読んだのかよ」

「一応はね」

「お、えらいじゃん」

「二口くんは完璧なんだよね?」

「あたりまえ」

私の小さな嫌味も、彼にとってはなんでもないらしい。綺麗な笑顔が返ってきた。その顔が少し憎たらしい。高橋さんの集合の合図に、私と二口くんは並べられた机へと向かう。向かい合うように丸く並べられたそれは、キャストの人数と同じ分だけ。裏方のスタッフは、空いたスペースでせっせっと何かを作り始めていた。

「今日キャストの皆が全員集まってくれてよかった!
最初だけは合わせたかったからね。
早速だけど、最初から読み始めましょう!」

私と二口くんは必然的に、高橋さんの隣へと座る。主役の二人はここ、と指名されてしまったのだ。机の上に台本とカラーペンを置いて、最初の一ページをめくる。読み合わせは思ったよりスムーズに行われた。間違って読んでいた漢字を直したり、可笑しなイントネーションを正したり。時には、こういう気持ちだと思うという高橋さんの言葉を、丁寧に台本に書き込んだり。ああ、もっと私も白雪姫の気持ちや心情を考えなくちゃいけない。最後のページが終わる頃には、もう始めてから1時間が過ぎようとしていた。

「とりあえず一通り読んだね…お昼休憩を挟んだら、さっそく立ち稽古しよう!」

「はーい」

そろそろ12時だ。お腹も空いてきたし、お昼の時間である。やけに気合の入った高橋さんの言う通りに、私達はお昼ご飯をとることにした。今日の練習は15時までだ。ご飯を食べ終わったら、もう立ち稽古かぁ。立ち稽古とは、おそらく実際に動いて稽古をすることだと思う。なんだか本格的になってきた。まずはキャスト皆で机を端に寄せてから、先にお昼をとることにした。どうやら裏方さんたちもお昼休憩に入るらしい。そっちをまとめているのは、実行委員の子たちだ。キャストより裏方さんのほうが、人数的には少し多い。それにこっちのほうが女の子も多い。小人役は女の子と男の子の半々くらいだ。

「名前ー、こっちで食べよう〜」

「あ、今行くー!」

お弁当を片手に、仲の良い子達の元へと向かう。皆揃ったところで、いただきますをして、さっそくお弁当に箸をつけた。話すことはやはり、文化祭のことが中心だ。

「どう?キャストのほうは」

「うーん、良い感じだと思うけど?」

「白雪姫だもんね〜、がんばんないとね〜」

「もう、うるさい」

「でも実際、良い感じだと思うよ?白雪姫と王子様が中々いいし…」

このグループは、私も入れてキャスト組が三人と、裏方組が二人。キャスト組の二人はニヤニヤと、あまりよろしくない笑みを浮かべている。

「最近、二口と仲良いじゃん?どうなのよっ」

「それ、私も気になる!今日も息ピッタリだった〜」

「…席も隣だし、相手役だし仲良くなったほうがいいでしょ?」

確かに最近はよく二口くんと話をしている気がする。今日だって、たまたまだけど一緒に登校してきたわけだ。それは相手役だから、という部分が大きいのだろう。そのおかげかメールもよくくれる気がして嬉しかったり、今日の朝みたいにドキッとしてしまうというのは内緒だ。二口くんがかっこいいのが悪い。

「なんだぁ、つまんないの!」

「なにかあったら教えてよね?」

「そうだよ名前!隠し事は無しだからね!」

「はいはい」

そんなことあるわけないのに。あったらいいなぁ、なんて。ああもう私、どうにかしてる。大好きな卵焼きは、今日だけ少し甘すぎる気がした。