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頭の中でモヤモヤとした、どうしようもない感情がぐるぐると回っている。ちっぽけな私がどうもがいたって、その事実はなんら変わらない。思わず、机の上に広げたまだ綺麗な台本を睨みつける。ああ、どうしてこうなったんだろう。白雪姫なんて、他にやりたい子がたくさんいるはずだ。それに相手役はあの二口くん。二口くんが王子様なんだから、余計やりたい人が多いのだとそう思っていた。

「みんなは白雪姫やりたくないの?」

私が白雪姫役に決まったその日の放課後、何人かの仲の良い友達にそれとなく聞いてみた。彼女達は確か、二口くんがやっぱり一番かっこ良いと言っていたはずだ。あわよくばそんな彼女達の誰かに、白雪姫をやってもらいたいのが本音である。しかし返ってきた答えは、思いもよらぬものだった。

「やりたくないってわけじゃないけど、別にどっちでもいいかな」

「だって相手役は二口くんだよ?」

「まぁ確かに二口はかっこいいけど、…ねぇ?」

「顔はいいけど、かなり捻くれてるじゃん?
なんかいろいろ言われそう」

「そうは言ってもあいつは良いやつだけどね。
でも私じゃ釣り合わないよ」

「確かに!あんなイケメンと一緒に舞台に立ちたくないっ」

笑いながら無理だと主張する彼女達に、私はポカンとしてしまう。それじゃあ、私はどうなる。あのかっこいい二口くんと、相手役を演じなければならないのに。私だって全くと言っていいほど、彼と釣り合っていない。完璧な二口くんと、平凡な私。おいおい、これはまずいんじゃないだろうか。

「え、なにそれ!私、公開処刑されるの?」

「名前なら大丈夫だって。まぁ、なんとかなる!」

「ならない!!」

頑張りなよーなんて、他人事のように言うなんて。ちょっと、酷すぎやしないかい。そうか、私が白雪姫にすんなりと決まった理由は、これが原因だったのか。と、夏休み練習前日の今日の夜まで、ずっと頭を抱えていた。台詞も覚えられないしもう明日は練習だしで、私の気分は落ちていくばかり。ふと、二口くんは台詞を覚えたのかなぁなんて、彼の顔を思い出してしまう。この間のLHRでの彼は、私を慰めるような言葉をかけてくれた。言葉に棘はあるけれど、その彼の言葉でちょっと私も頑張ろうかな、なんて思ったり思わなかったり。

「それに俺が王子様なんだから別にいいだろ?」

思わずその言葉がリフレインしてしまい、私の鼓動が少し速くなってしまう。彼の顔を頭から追い出すように、また机の上に開かれた台本へと目を向ける。あの二口くんかっこよかったな、なんて。ああ、もう、どうしたんだ私。かっこよくてなんだかんだ言って優しいなんて、彼は本当にずるい。白雪姫でもいいかも、なんて思っているあたり、私はもうダメかもしれない。それはまるで、少しずつ私の心が彼の色に染まっていくような、そんな感覚。

ちょっと、頑張ろうかな。