「ということで!」
「なーにが、ということで!だよ」
「黒尾くんうるさいです」
「名前さんどうしたんですか〜?」
それは、ある部活の開始前の部室での出来事だった。面倒くさそうな顔をする黒尾を無視して、私は笑顔で話を続ける。こてんと首を傾げているリエーフは、相変わらず可愛くない。私は出来るだけ力を込めて、ある事を訴えた。
「今日は何日ですか!明日は何日ですか!」
「…名前どうしちゃったの」
「研磨は気にすんな」
「みんな、夏休みボケして忘れちゃったんじゃないの?」
「なにをですか!名前先輩!」
何が何だか分かっていない部員達に、ほとほと呆れてしまう。今ここにはある人物がいない。そのある人物は委員会の集まりがあるとかで、少し遅れるらしい。笑顔で私の話を聞いてくれる走くんは本当に可愛い。リエーフと違って。
「どうせ夜久のことだろ?」
まさかまさか、黒尾くん貴方が一番に気がつくとは。さすが同じクラス。愛ですね!
「そうです!明日は夜久衛輔くんのお誕生日でーす!」
「はっ!!そういえば!」
「猛虎くん、先輩の誕生日を忘れるなんて駄目でしょー?」
「すんません!名前さん!」
さぁさぁ、皆さんが思い出した所で本題です。さて、あの夜久くんのお誕生日なわけですが!何をあげたらいいのか、さっぱり分からないのである。毎年部員達には何かしらあげているのだけれど、夜久の誕生日となれば今年で三回目。あげつくした感満載だ。かるく誕生日パーティーなんかもしてるし、私達は本当に仲がいいと思う。
「誕生日パーティーなら少しずつ準備してるじゃん。毎年のことだしな」
「クロはプレゼント考えた?」
「まぁ、テキトーに」
男の子同士ならそれなりに考えやすいのかもしれないけど、私には正直さっぱりだ。一年生のときはタオル、二年生のときはリストバンドをあげた。今年は何にしようか。ずっと考えていたのだけれど、中々思いつかない。そこで部員達に聞いてみよう、という考えに至ったのである。
「なにあげればいいか全然わかんないの」
そんな私に黒尾は呆れたような顔で、ため息をついた。
「深く考えすぎだろ?何で思いつめてんの」
「毎回そうだけどね、みんなの誕生日プレゼント考えるの大変なんだからね?」
「野菜炒めでも作ってくれば?」
からかうように笑う黒尾が憎い。なんだこいつ。むかつく。
「っていうか、お前からのプレゼントなら何でも嬉しいだろ」
でも、そんな黒尾の言葉に救われたのは言うまでもない。夜久の誕生日は明日だ。こうやってあれこれ考えるのも、プレゼント選びの醍醐味である。