あっと言う間に月日は流れ、いつの間にか入学してからもうすぐ一週間が経とうとしていた。あれからルームメイトの二人とも仲良くやっている。
一つ一つの授業はとても面白い。そんな中で今日は楽しみの一つでもある、魔法薬学の初めての授業だ。ルームメイトの二人はスリザリンと合同授業ということもあり、憂鬱だと文句を並べている。この時代でも魔法薬学はスリザリンと一緒らしい。ハリー達がいた時代より、今の時代のほうがグリフィンドールとスリザリンの確執は大きく溝も深い。私は今日もリリー達と一緒に朝食へ向かおうと、二人との会話を中断し支度を整え部屋を後にした。
「リリーおはよう」
「おはよう」
女子部屋へと続く階段の下辺りには、赤髪の彼女が立っていた。リリーはいつも、朝からシャキッとした表情をしている。私がこの、まだ短いホグワーツの生活で感じた彼女の印象は、自分の意思をしっかりと持った少し強がりな女の子だと言うこと。嫌なことはきっぱりと嫌だと言うし、顔にも出やすい。その反面、とても世話好きで優しい性格をしている。だんだんとリリーや、他の皆を知っていくことはとても楽しかった。もちろんシリウスやジェームズ、リーマスやピーターとも仲良く過ごしている。
「名前にリリー!おはよう!」
食欲をそそる良い匂いが立ち込める大広間には、グリフィンドールの席でいつもの四人が朝食をとっていた。ジェームズは朝からテンションが高い。それに比べて朝に弱いシリウスのテンションは低く、うざったそうにジェームズを見ている。
私はいつものようにシリウスの隣りに座り、その私の隣りにリリーが座った。そんなリリーにジェームズは、僕の隣りに座れば良いのに!と不服そうに眉を寄せる。そんな光景ももう慣れたものだった。
「今日は魔法薬学の授業があるね」
カリカリのトーストにハチミツをつけて食べていると、シリウスの隣りに座っていたリーマスがふとその話題に触れた。グリフィンドールの中でも特に、シリウスとジェームズはスリザリンが嫌いなのである。ジェームズはあの純血主義に高飛車な態度、そして特にマグルを侮辱する言動や行動などが癇に障るのだろう。
「なんで僕達がスリザリンと一緒に仲良く授業を受けなきゃいけないんだ」
「仲良くする気なんてないだろ」
「授業なんだから変なことはしないでちょうだい」
「僕達がいつ変なことをしたって言うんだい!?」
「しそう、って話よ」
彼らはまだこの時点で悪戯などをしているいるわけでは無かったが、何かを企んでいる様子ではあった。悪戯仕掛け人と言われるまでそう遠くはないだろう。そんな話をしながら朝食を食べ、1限である魔法薬学の授業へと向かう。教室の場所は地下だ。また九月なので涼しいくらいなのだが、冬になると地下はものすごく寒そうだ。
「名前のところにもきたか?手紙」
隣を歩くシリウスは嫌そうな顔で私を見ていた。手紙という単語と彼の顔を見て、すぐに何のことかとすぐに理解する。おそらく彼が言っているのは、おばさまからの手紙のことだろう。そういえば入学して次の日に手紙がきていた。
「おばさまからの?」
「やっぱり名前にもきてたか」
「まぁ、だいたい内容は分かるでしょ?」
「どうせ寮のことだろ?
あとは俺のことを頼むとか、そんなことか」
「そうそう」
私はおばさまからよく、シリウスのことを頼むといったようなことを言われている。そしてその彼の様子もよく聞かれるのだ。反抗しかしないシリウスが心配なのだろう。オリオンさんのほうはもう呆れているようだったが、ヴァルブルガさんのほうはブラック家の嫡男ということもあり、なんとかブラック家として行動してほしいようだ。
「それよりレギュラスに手紙書いた?」
「あ、書いてねぇ」
「もう、書いてあげてよね。
レギュラスはあの家で今一人なんだから」
「わかってる。もう出したのか?」
「うん、昨日出したから」
「じゃあ明日にでも返事くるだろ」
レギュラスにはグリフィンドールになった事や授業の事を書いて、あとは彼の体調などを少し聞いておいた。今きっとブラック家は大変なことになっているだろう。ブラック家のしかも直系の嫡男がグリフィンドールとなれば、その衝撃は大きい。レギュラスにとばっちりがいかなければいいのだが、そうはいかないはずだ。
「レギュラス大丈夫かなぁ」
「…手紙書いてやるか」
家がどうなっているかなんて、そんなものはシリウスが一番よく分かっているだろう。なんだかんだいってシリウスは、レギュラスの事を大事にしている。レギュラスが何も逆らわずに従うところにはヤキモキしていると思うけれど。このままずっと二人が仲良くできればいいのにね。
魔法薬学の教室に入ると、赤色と緑色のネクタイが交わることなくキレイにに別れていた。グリフィンドール生とスリザリン生が仲良く隣同士に座っているなんて、逆にそっちのほうが驚いてしまう。
「…あ」
ふいに、ポツンと一人で座る緑色の彼を見つけて私はそちらに駆け寄る。最近挨拶ぐらいしかしていない彼の好きな授業に、私もわくわくと胸を躍らせるのだった。