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不思議な夢。それが何故起きたのか、そんな事があり得るのか、それはこれから先も、一生涯において解けない謎である。
存在するかも分からない、神様の悪戯なのかもしれない。


梟谷学園の校門の前で、女子校の制服を着た名前はとても目立っていた。梟谷の最寄駅近くのカフェで時間を潰した彼女は、頃合いになると梟谷へと向かったのだ。ちょうど何処も部活が終わった時間なのか、ジャージ姿の男女が校門を通り抜けて行く。そんな梟谷生の視線に居心地が悪くなりながらも、彼女は男子バレー部の登場を今か今かと心待ちにしていた。そしてそれは、案外すぐにやってきた。

「赤葦くんは…」

バレーボール部らしき集団だと分かったのは、その生徒達の着ているジャージを見たからだ。私のその声に一斉にこちらを見た彼らに、思わずびくりと肩を震わせる。名前の声は独り言のように小さかったのだが、彼らには聞こえてしまっていたようだった。

「なに、赤葦の知り合い?」

「へいへいへーい!赤葦の彼女か!?」

狐のような目をした男子生徒が名前へ近寄ると、シルバーの髪色をした特徴的な髪型の男子生徒が勢いよく名前へ詰め寄る。彼女はその勢いのよさに、思わずその場で一歩後退ってしまう。

「あの、赤葦くんは、いますか…?」

絞り出した声は、とても小さくて、少し震えていた。

「名前」

後ろから聞こえた声は、本当にあの夢の中の彼のもので。彼が名前を呼ぶだけで、名前はこの人が自分の知っている赤葦京治なのだと実感した。

「私、あなたに話したい事があるの」

その言葉を聞いて彼女の手を引いた赤葦は、挨拶もそこそこに、チームメイト達から離れるようにその場を立ち去る。非難めいた言葉など、もう彼の耳には入らなかった。
小さな公園まで行き着くと、赤葦は躊躇する事なくその場へ足を踏み入れる。運良く、そこには誰もいなかったから。

もし出会う事が出来たら何をしたい?
それは2人とも、何度となく考えた事だった。そして何処かで"この人に会いたい"と思っていたのかもしれない。

「あの声の大きい人は木兎さん?」

「うん、うちのバレー部の主将」

「想像と全然違った」

「どんな想像してたの?」

今日が初対面で、初対面じゃない。
幼い頃から沢山の事を話した。母親に叱られた事、学校の友達の事、上手くいかなかった事。
思わず顔を手のひらで隠した名前は、恥ずかしそうに耳まで赤くする。

「どうしたの?」

「急に恥ずかしくなったの。だってあんな事も話してたから…」

「それは俺も同じ」

どうして、そのような夢を見るようになったのだろう。
どうして、夢の中で話した会話がふたりとも同じなのだろう。
なにも分からない。答えは何処にもない。

だけれども、その不思議な夢がふたりにとって、煌めく星のようにかけがえのないものだったのは、間違えようのない真実だ。

「ケーキ、食べに行かない?」

「ちょうどお腹空いてた。おすすめのお店教えてくれるんでしょ?」

「もちろん!」

煌めく星のような夢は、ふたりにとって宝物だった。


スターダスト・ドリーム fin