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茹だるような暑さが、また今年もやってくる。
先ほどグラウンドで行われた体育の授業では、6月だというのに熱い日差しが容赦なく私の肌に照り付けてきた。これからはまたさらに暑くなっていくのだろう。そう考えただけで、とても憂鬱な気分になる。

「それではまず球技大会の出場種目を決めまーす。」

本日の最後の授業であるこの時間には、来月に行われる球技大会の出場種目と、夏休みが明けるとすぐに始まる文化祭の出し物についての話し合いが行われていた。
球技大会は、所属している部活と同じ種目に出場は出来ない。決まり事はそれくらいだろうか。もちろん男女分かれて行われる。去年は確かバスケットボールに出場をしたっけ。最初の試合で3年生のクラスに当たってしまった私達は、1年生という事もあり散々な試合をしてしまった。そんな苦い思い出が蘇ってくる。今年はどの種目に出場をしようか。出来れば楽な種目が良いと、運動神経のあまりよくない私は思ってしまう。

「苗字さんはどれにすんの?」

後ろから聞き慣れた声が私を呼んで、私は振り返りながらそれに返事をする。

「んー、ドッジボールがいいかなぁ。菅原くんは?」

「バレーには出れないし、バスケかな」

種目は男女同じで、バレーボール・バスケットボール・ドッジボールの3つだ。バレー部の菅原くんはもちろんバレーには出場が出来ないわけで、少し残念そうだった。

「バレー出たいでしょ?」

「もちろん」

「バレーしてる菅原くん見たかったなぁ」

「えっ!」

彼は何故か、私の言葉に酷く驚いた顔をした。その理由が分からず、私は不思議に思いながら首をかしげる。そんな菅原くんは、一瞬だけ驚いた様に瞬きをしただけで、またすぐにいつもの柔らかい笑みを顔に浮かべる。

「今度、試合とか練習でも見に来る?」

「いいの?」

「先輩達も引退したし大丈夫だと思うよ」

「わぁ、楽しみにしてる!」

菅原くんや澤村、そして西谷くんも。彼らがバレーをしている姿が見られるなんて、とても楽しみだ。

「次は文化祭の出し物を決めるので、候補がある人は言ってください」

男女別に分かれて種目を決めると、今度は文化祭の出し物を決める番だった。委員長のよく通る声を聞いて、いくつか挙がる候補が黒板に記載されていく。それは、アイスの販売だとか喫茶店だとか縁日だとか、よくある文化祭の出し物ばかりだ。

「菅原くんは夏休みも部活でしょ?」

「うん。ほぼ毎日」

「ひゃー、大変だね。」

「夏休みさ、文化祭の準備あるだろ?あんまり出られないんだよね」

「運動部はみんなそうだよ。仕方ないもんね」

「苗字さんは準備に来るの?」

「夏休みまで学校には来たくないけど、しょうがないもんね。それに文化祭の準備ってワイワイしてて楽しいよ」

「俺も出来るだけ参加しないとな」

「無理しないでね」

菅原くんと他愛もない話をしていると、いつの間にかクラスの皆が盛り上がっていて、黒板を確認すれば其処には大きく”お化け屋敷”という文字が書いてあった。お化け屋敷か。準備が大変そうだ。

「お化け屋敷?」

「もう決まりそうじゃん」

「みんな盛り上がってるもんね」

「準備大変そうだけど」

同じ事を考えていた菅原くんの言葉に小さく笑って、私もその言葉に同意をする様に頷く。

「お化け役、やってみたくない?」

「苗字さんが?」

「だって楽しそう」

「確かに!」

彼はそう言って悪戯っ子の様な顔で笑う。男の子はこういうものが好きそうだ。
黒板に書かれたお化け屋敷という文字に赤い丸が付いたのを見た私達は、お互いに顔を見合わせて笑った。今年の文化祭も楽しみだ。