「もう2年生かー、早いな!」
「ほんとになぁ。後輩も出来るしな」
「たくさん入ってくれるといいけど…」
「旭が怖くて誰も入らないかも」
「なっ!…スガ、そんな事言うなよ」
「うそうそ、冗談だって」
始業式で入学式でもあるこの日にも、俺たちバレー部の朝練はある。大地と旭と部室を後にしいつもはそのまま教室に向かうのだが、今日は昇降口の前に設置された掲示板へと向かった。そこでクラスの発表がされているからである。とは言っても、俺と大地が所属する進学クラスは2クラスしかない為に、去年のクラスのメンバーの半分くらいは一緒なのだけれど。それでもやはりクラス替えは緊張するわけで。誰と一緒になるだろうかと楽しみだった。
「あー、やっぱり人がいっぱいだな」
「旭、俺たちの分も確認してくれない?」
「えーと、ちょっと待って」
他の多くの生徒達よりも身長が高いであろう旭は、こんな時に便利だと思う。俺もう少し身長が欲しいなぁ、なんて思ってみたり。去年よりも伸びていたら嬉しい。
「あ、あったよ。スガも大地も5組だ」
「まじ?大地と一緒?」
「今年は同じクラスか。よろしくな」
大地のその言葉に、俺も同じ様な返事をした。部活もクラスも一緒だなんて、何だか変な感じだ。
そうこうしているうちに、掲示板の前はだんだんと人が空き始めてきた。そろそろホームルームが始まる時間なのだろう。さすがに今日は朝練は早く終わったので、いつもよりだいぶ余裕があると思ってはいたが、そうもいかないらしい。初日から遅刻なんてしたくはない。
昇降口で靴を履きかえて、新しクラスへと向かう。2組になった旭と早々に分かれ、もう目の前には自分達のクラスが見えてきた。今年はどんなクラスになるだろうか。来年は受験という事もあるわけで、思いっきり遊べるのは今年が最後だろう。楽しいクラスにしたいのが本音だ。
「なんか緊張すんな」
「半分くらいは前と変わらないだろ?」
「でも新しいクラスじゃんか」
「それもそうだな」
開いていた教室の扉からは、見知った顔や楽しそうに雑談をする生徒達が見えた。そのまま俺たちも教室に入ると、友達や去年同じクラスだった者が声を掛けてくれる。そんな中に彼女の姿を発見した俺は、同じクラスなのかと思わず驚いてしまった。
「苗字じゃん。また同じクラスか」
俺の視線に気が付いた大地は、彼女を見て楽しそうに笑った。彼らは本当に仲が良いらしい。そんな俺たちに彼女も気が付いたようだ。
「澤村、また同じクラス!」
「ああ、そうみたいだな」
「菅原くんも、今年は同じクラスだね」
「うん、びっくりしたよ」
「2人ともよろしくね!」
苗字さんと同じクラスだなんて、何だか不思議な感じだ。まだ話した事の無い人が、少し周りを見渡しただけでこんなにもいる。大げさかもしれないが、これがクラス替えの醍醐味なのだろうか。
「なんか菅原くんと同じクラスで授業受けるなんて、ちょっと不思議だね」
「えっ、俺も今同じ事考えてた」
「ホント?一緒だね!」
「苗字さんが授業中寝てないか確認しようかな」
「菅原くんこそ、朝練もあるし危なそうだよ?」
「うーん、否定は出来ない」
「あはは、お互い頑張ろうね」
「おう!」
「お前ら2人とも寝る気か」
「やだ、澤村怖い」
「大地にバレないようにしないと」
高校2年生、後輩も出来て学校にも慣れて、受験はまだ先なのでほどほどに勉強をして。なんだか今年は、楽しいクラスになりそうだ。