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「あ、セブルス!ちょうどいいところに」

魔法薬学の教室に行こうと廊下を歩いていると、たまたま彼と出会うことが出来た。
私はスラグホーン先生に特別に許可を貰って、魔法薬学の教室を数時間貸してもらえる事になっている。セブルスに会えたら、一緒に何か調合をしようと思っていたのだ。

「これから何か用事はある?」

「…特に無いが」

「これから薬学の教室で調合をしようかと思って」

「調合?」

「そう、まだ授業ではやったことのない物を作りたくて。セブルスも一緒にどう?」

「…行く」

「セブルスがいれば心強いね」

調合という言葉に僅かに嬉しそうな顔をした彼は、本当に薬学が好きなのだろう。彼がたまに見せる嬉しそうな表情は、魔法薬学の事が大半である。そして、彼はもちろんスラグホーン先生のお気に入りの1人だ。
こうやってセブルスと2人で廊下を歩く事も中々無い。さりげなく私に歩く速度を合わせてくれる彼は、その歳のわりにとても紳士だ。さすがイギリス人というべきか、12歳とは思えない。そんな彼と話をしながら廊下を歩き、2人で薬学の教室に入ると、そこには既にスラグホーン先生が椅子に座って私達を待っていた。

「やぁ、スネイプ君も来たんだね」

「はい、僕もいいですか?」

「もちろんだよ。君の調合は素晴らしいからね。
じゃあ私は奥の自室にいるから、何かあったら呼んでくれ」

「ありがとうございます、スラグホーン先生」

「君たちのような優秀な生徒がいて私も嬉しいよ。ここにあるものは好きに使いなさい」

先生はそれだけ言うと、嬉しそうな顔をしながら自室へと入っていった。机の上には大鍋と、さまざまな材料が並べられている。これを用意してくれたのかと思うと、感謝でいっぱいである。自分で用意するとなると、とても大変だ。全てお父さんを頼りにしてしまうだろう。

「セブルスは何か作りたいものはある?」

ブラウスの袖をめくり、材料を確認しながら私は彼に質問をする。彼は材料と私の持ってきた薬学の本を見比べながら、何にしようか決めあぐねているようだった。

「私ね、"安らぎの水薬"を作ってみたくて」

「安らぎの水薬?…確か、OWLに出てくる物じゃないのか」

「そう。一度だけ作った事あるんだけど、上手くいかなくて」

「まだ僕たちじゃ、あれを作るのは難しいと思うが」

「セブルスなら作れるでしょ?」

「僕だってまだ作った事はない」

「2人でやれば良いところまでいくと思うの。セブルスがいるもの」

「僕を買い被りしすぎだ」

「そんな事ないよ。それにこんなに材料が揃っているんだから、難しい物を作らなくちゃ」

「…失敗しても知らないからな」

その言葉の割にやる気な彼に、やはり彼を誘ってよかったと思った。彼の生き生きとした表情は中々見られないもので、何故か特をした気分になる。今度はリリーも誘って3人でやろか。今日はたまたま、彼女はルームメイト達とお茶会をすると言っていたから連れて来れなかったのだけれど。

「この前はちゃんと綺麗な銀色の煙が出なかったの」

「何か行程を間違えたのか?」

「うーん、ちゃんとやったつもりだけど…」

作り方を確認しながら、必要な材料を用意する。魔法薬学の調合はきっちりとした材料と正確な手順でなければ、ちゃんとした物を作れはしない。

「じゃあ、始めよっか」

「ああ、まずはこの順番に材料を入れて、初めは右回しだな」

「私はこっちの材料の下準備をするね」

「頼む」

2人で手分けをしながら、材料の下準備をしていく。スリザリンのセブルスとは、まだ一緒に魔法薬学のペアを組んだ事がない。だから、こんなに間近で彼の手際を見た事がなかった。

「セブルス手際いいね」

「…お前こそ人の事は言えないだろう」

「私はお父さんを見てたから」

小さい頃から薬学の研究者であるお父さんの近くで素晴らしい調合を見ていれば、自分も必然と手際は良くなるだろう。私は近くにそういう人がいるから、魔法薬学が人より少し得意になれた。

「…いつか、君の父親に会わせてくれ」

「えっ」

「薬学の話が聞きたいんだ」

「もちろん!」

彼が私のお父さんに会いたい、そう言ってくれたのがとても嬉しかった。薬学が好きなセブルスなら、不思議な事ではないけれども。セブルスと前よりも仲良くなれた気がしたから。そうと決まればお父さんに話をしておかなくちゃね。

「ほら、この順番に入れるぞ」

「成功させようね」

「ああ、もちろん」

ニヤリと笑った彼に、私も口角を上げて笑い返す。どうせなら、良いものを作ってスラグホーン先生をびっくりさせようか。私の提案に、彼は当然だといわんばかりの表情で頷いてくれた。