夕ご飯を食べ終えて、お風呂も済ませてしまったこの時間は、どうしても眠くなる。でもまだ寝たくはない。だって今日はあの計画の前日だから。
「名前、眠いの?」
ベッドに横になりながらレギュラスを待っていると、少し濡れた髪の彼が部屋に入ってきた。私の寝ているベッドに座り、可笑しそうに目を細めて笑う。
「レギュラスもっとこっちきて」
それを聞くなり、彼も私と同じようにベットに寝転んだ。いつの間にか時は進み、もうあの計画まで数時間しかない。
「僕はブラック家があんまり好きじゃなかった」
「知ってるよ」
「でもそのおかげで名前と結婚できたからね。ブラック家に生まれてよかったと思ってるよ。あとシリウスが家を出てくれたのもね」
「私もシリウスさんに感謝しなきゃね」
声をあげて二人で笑う。私達は二人で支えあって生きてきたんだ。
「…名前は僕と一緒で幸せ?」
私の手を握り、優しく髪を撫でるレギュラスの手が心地いい。
「あたりまえでしょー。レギュラスがいるから幸せ」
「僕も名前といれて幸せ」
少し悲しそうに笑う彼の顔に、胸が締め付けられた。そんな顔をするくらいなら、止めればいいのにね。
「だからね、レギュラス。私、レギュラスがいなくなったら死んじゃうよ」
真っ直ぐとレギュラスの顔を見る。泣きそうな、困った顔をするレギュラスが、なんだか可愛かった。
「…だめだよ。名前は生きなきゃ」
私の全てはレギュラスだ。堅苦しくて、何も自由がなかったあの家から、私を救って、愛してくれたのはレギュラスだ。
「レギュラスが死ななければいいの」
「……そうだね」
くっつくように二人で寄り添って、お互いの温もりをかんじて、私は幸せなんだと心から思う。レギュラスが隣にいるだけで、私は幸せなのだから。
「名前、もう寝ようか」
「……うん」
そっと優しく触れた唇は、暖かくて、だけどとても悲しかった。
「愛してるよ」
「私も、レギュラスを愛してる」
どうせ私達は、明日死ぬんだ。