今年はレギュラスと一緒にホグワーツへとやって来た。レギュラスが列車にいるだけで、嬉しくて顔がほころんでしまう。最初はシリウスも一緒だったけれど、ジェームズ達の所に行ってしまった。私も少しだけリリーとセブルスのコンパートメントに顔を出して、2人と久しぶりに顔を合わせる事が出来た。
それからはレギュラスとお菓子を食べながらお話をしたり、本を読んで静かに過ごしたりとしていれば、あっという間に目的地へと着いてしまう。レギュラスは緊張しているようで、でもわくわくと楽しそうに新入生達の方へと向かって行った。私はリリー達と合流して、初めて見るセストラルに驚きながら(私にセストラルが見えたのだ)、久方ぶりにホグワーツ城へ向かう。誰かの死をまだこの世界で経験した記憶がない私にとって、セストラルが見える事が不思議でしょうがなかった。
「今年はどんな1年生が入ってくるのかしら!楽しみだわ」
「グリフィンドールの新入生はどんな感じかな?」
「私、1年生とも仲良くなりたいわ」
リリーはどこかソワソワと、楽しそうに組み分けを待っている様だった。去年の今頃は皆緊張した面持ちだったが、今はもうそんな様子が微動も感じられない。組み分けは誰でも緊張するのだ。だって一瞬で、7年間暮らす寮が決まってしまうのだから。
「シリウス、レギュラスはきっとグリフィンドールじゃないだろうね」
眠そうな隣のシリウスに、そう耳打ちをする。
「あいつはきっとスリザリンだろうよ」
「スリザリンでも仲良くしてね。
レギュラスはレギュラスなんだから」
「…わかってる」
「レギュラスがスリザリンじゃなかったら、おばさまどうなっちゃうかなぁ」
「考えただけで恐ろしいな」
ニヤリと笑ったシリウスは、言葉とは裏腹にとっても楽しそうだ。まだシリウスとレギュラスの仲は良好。このままの関係を続けてほしい。仲違いなんて、してほしくない。
そんな話をしているうちに、どうやらもうそろそろ組み分けが始まるようだ。1年生達が入場するのを見て、去年の私達を思い出した。上級生は皆、こんな感じだったんだろうな。その1年生の列の中から、しっかりと姿勢を正して前を向いているレギュラスを見つけた。やけに堂々としている姿は、さすがブラック家というべきか。だけれども、その顔は少しだけ不安そうにも見える。
「それでは、組み分けの儀式を始めます。
アーロン・マーカス!」
次々と名前が呼ばれていき、それぞれが各寮に振り分けをされていく。レギュラスはすぐに名前を呼ばれた。
「ブラック・レギュラス!」
去年のシリウスと同じ様な、そんな静けさが辺りを包む。ブラック家だからもちろんスリザリンだと思いきや、シリウスの事もあるからスリザリンも気が気ではないだろう。私はレギュラスをジッと見つめながら、組み分け帽子の言葉を待った。
「ーースリザリン!」
シリウスの組み分けの時間は恐ろしく長かったように思う。レギュラスの組み分けは直ぐだった。
一拍遅れてから、大広間にスリザリンの歓声が響く。どこかホッとしたような様子のレギュラスは、スリザリンのテーブルへと向かっていた。
「君の弟くんはスリザリンだね」
「当然だろうよ」
ジェームズは面白そうにレギュラスを見ている。
「本音を言えば、レギュラスにもグリフィンドールに来てほしかったのに」
「寮が違うからって会えないわけじゃないんだ。
まぁ、グリフィンドールとスリザリンじゃあれだろうけどな」
「別にレギュラスとご飯とか一緒に食べても大丈夫だよね?
私がスリザリンの所で食べてても違和感ないし」
「お前なぁ、」
「シリウスも一緒だよ?3人でごはん食べたいでしょ?」
そんな私に呆れた顔をするシリウスは、一つため息を吐いて、優しい顔で今度はレギュラスを見ていた。
早速、明日の朝早く3人で朝食でも食べようかな。いつの間にか組み分けの儀式は終わっていて、目の前に美味しそうな食事が現れる。久しぶりのホグワーツの美味しい料理に、私は早速口をつけた。
「レギュラス!」
朝たまたま、誰か男の子と一緒にいたレギュラスの背中を大広間の前で見つける。一緒にいた男の子に何か一言を告げると、彼は私が並ぶのを待っていてくれた。一緒にいた男の子は、1人で先に大広間に入ってしまったみたいだ。
「おはよう、レギュラス。
スリザリンの制服似合ってるよ」
ちょん、とその緑の色のネクタイに触れれば、レギュラスは少し恥ずかしそうにはにかむ。
「名前おはよう。
兄さんと一緒じゃないんだね」
「まだ寝てるんじゃないかな?
レギュラスと一緒にご飯食べようと思って1人で来たの。
シリウスもきっと後から来ると思うよ」
「僕と?いいの?」
「一緒にいた友達は大丈夫?迷惑だったらごめんね」
「ああ、あいつはたまたま部屋が一緒だっただけだから。
僕がグリフィンドールの席に行こうか?」
「大丈夫大丈夫!スリザリンの所で食べよう」
レギュラスと並んで大広間に入って、緑のカラーが揃うテーブルに座った。目立たないように隅っこのほうで。でもやはり私たちの姿は皆から注目を浴びていたようで、呆れた顔をした彼が私達の目の前を通る。
「あ!セブルス!」
「…なんで、僕に声を掛けるんだ」
小さな声でそう呟いたセブルスの本音を無視して、私達の前の空いてる席に座ってほしいとお願いをしてみた。彼は心底嫌そうな顔をしながらも、そこに腰を掛ける。
「おはようセブルス」
「ああ、おはよう…
お前達目立ち過ぎだ。なんでフラールがスリザリンの席にいるんだ」
「レギュラスと朝ごはんが食べたかったの!
私の幼なじみのレギュラスだよ。
スリザリンだから仲良くしてね」
セブルスに隣のレギュラスを紹介してみる。レギュラスは少し戸惑ったように、セブルスに声を掛けた。
「はじめまして、レギュラス・ブラックです」
「セブルス・スネイプだ」
「レギュラスはシリウスとは違うから安心して大丈夫だよ」
そう笑いながら告げれば、セブルスは心底嫌そうに顔を歪めた。それにまた笑って、なんだか少しちぐはぐな3人で言葉を交わしながら朝ごはんを食べる。セブルスとはやはり薬学の話しで盛り上がって、レギュラスも興味深そうに質問をしたり、割と和気藹々と時間が進んでいったと思う。
少し経ってからやけに機嫌の悪いシリウスがこちらに乗り込んでくるのは、また別の話。