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「レギュラスどうしたの?」

「気にしないで」

そうやって怪訝そうにこちらを見る表情だとか、ここ最近で彼女の事をたくさん知れた様な気がした。


『 Lesson 04 仲良くならないといけません。』

教科書を見ながらカリカリと羊皮紙に綺麗な文字を並べていく彼女を、僕は本を読むふりをしながらこっそりと盗み見る。こっそりなんて言ってはいるけれど、全くそうなっていない事も分かりきっている。そんな僕の事なんか御構い無しに、彼女は変身術の課題に取り組んでいた。

「あ、スペルミス発見」

「うそ!」

「ほらここ」

「あー、本当だ。ありがとう」

綺麗な字を書くんだな、と思っていた矢先、ギュッと眉間に皺を寄せた名前と目があった。

「レギュラスは終わったの?」

「変身術のレポートなら終わってるよ」

「さっきから手に持っているその防衛術の本、あんまり進んでないみたいだけど?」

ここ数ヶ月でだいぶ僕に慣れてきた彼女は、僕にこんな嫌味まで言うようになっていた。夕食後のまだちらほらと人がいる談話室の隅で二人で過ごすくらいには仲良くなっているのだと思う。

「だって名前を見ている方が楽しいから」

「…そういうことはあんまり言わないの」

彼女は少し照れたように俯いて、また課題に取り組んでいった。そんな様子に思わず笑いながら、ほとんど目を通していない本を閉じる。実はもう読了済なのだ。

「明日はクィディッチだよね?寝なくて大丈夫?」

「そうだよ。まだそんなに遅くないし大丈夫」

「そう、ならいいけど」

「もちろん観に来てくれるんだろう?」

「その予定だけど……友達も行くしね」

「前までほとんど観戦してなかったって聞いたよ。名前がクィディッチに興味持ってくれて嬉しい」

「うん、まぁね。ちゃんと観たら面白かったの」

「あはは、ならよかった」

彼女がクィディッチに興味を持ってくれたのが僕が原因だったらいいのに。ガラにもなくそんな事を思ってしまう僕は、おかしいのだろうか。最近は、彼女のいろんな表情を見るのが楽しくて飽きないのだ。本当に楽しそうに笑う顔だとか、眉を寄せて必死に考える難しい顔だとか、ひとつひとつが僕とは違う新鮮な表情だから。

「レギュラスは本当に楽しそうに空を飛ぶよね」

「そうかな?」

「うん。いっつも怖い顔してるけど、箒に乗ってる時はキラキラしてる」

「え、僕いつも怖い顔してる?」

「うん、けっこう」

「ひどい」

あんまり表情に変化が無いとは言われるけど、こうやって面と向かって怖い顔だなんて言われた事がなかった。そういえばセブルス先輩とかクラウチとかには、いつも難しい顔しているな、とは言われた事がある気がするけれど。

「名前といる時はそんな顔してないよね?」

「まぁ、」

「だったらいいや」

「私といる時のレギュラスはニコニコしてて可愛い」

「は、…かわいい?」

「うん、かわいい」

こうやって突拍子も無い事を言うのも、最近になってからだ。彼女は突然変な事を言うから困る。可愛いなんて、男なんだから言われても嬉しくない。

「名前のほうが可愛いよ」

「かっ、…だから、そういう事は言わないの!」

「おかえし」

少しは僕も、反撃は出来ただろうか。僕だけやられてばっかりじゃ、つまらないから。彼女が可愛いのは本当の事だけどね。