「暇ねぇ」
「暇とはなんだ。忍務中だぞ」
「分かってるわよ。だけど待ってるだけって、動かないから体が固まってきちゃうんだもの」
「そんなに言うなら組頭のところにさっさと行けばいいだろ?」


そう言ってやると、なぜか名前は少し顔を赤らめてそっぽを向いた。


「今そんなこと、出来るわけないじゃない」
「じゃあ黙って待ってろよ」



今、俺たちは敵城の近くにある森にいる。なぜこのような場所に、しかも名前と二人でいるかというと忍務だからとしか答えようがない。組頭が掴んできた情報を城へ届ける伝令役が俺、組頭から合図を受けたら城へ忍び込み、殿から指示された仕事を実行するのが名前の役目だ。仕事の内容を聞いたわけではないが、こいつのことだ。きっと暗殺だろう。
ここで待つよう指示をしたのは組頭だ。まったくなぜわざわざこいつと一緒にいなければならないのだ。



「あ、」


名前が敵城の方を向き、小さく声を上げた。
そこからは狼煙が上がっていた。名前が動くサインだ。覆面を巻きなおし小言で言った。


「じゃあお先に」
「……あぁ」


名前は先程までとは違い真剣な顔つきになると、木へと飛び移った。
その瞬間に辺りは一気に静かになる。どうやら、俺の仕事はまだ無いらしい。
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