私は逃げるように窓から窓へ飛び移った。後ろから文次郎が叫び声が聞こえてくる。
飛び移ったと言えども私の家と文次郎達の家はほぼ繋がっているようなもので、窓を開けて手を少し伸ばせばそこはもう私と留三郎の部屋だ。


「おい、何逃げようとしている!終わるまで帰さないぞ!」
「うわ何その言い方!文次郎変態みたいだよ引くわー」
「ばっ、バカタレェッ!!」


顔を真っ赤にしながら叫び散らす文次郎を無視して、私はピシャンといい音をたてて窓を閉めた。
まぁせっかく宿題を教えてくれたんだし、後でメールでお礼でも言おうかと考えながら床に撒き散らしていた宿題を拾い上げていると、留三郎が机に肘をつきながら不思議そうにこちらを見てきた。机の上にはノートや教科書が広げられている。



「お前何やってんだ?」
「いやぁ文次に宿題教えてもらってたんだけど、色々あって逃げてきちゃった」


そう言うと留三郎は「あぁ、」と呟いた。


「遅刻したのか」
「そーですよ結局遅れたんですよ悪いかこの野郎!」

失笑している留三郎に向かって私は怒鳴る。畜生、元はと言えばこいつが起こしてくれなかったからなのに!……たぶん。

留三郎の机の上の教科書を覗きこむと、たくさんの数字が私の目に飛び込んできた。見ているだけで頭がくらくらしてくる。


「うっわ何これ。頭痛くなる」
「ただの数学だろうが意味わかんねぇよ。お前も少しは勉強しろよ。この前ヤバかったんだろ?あと1週間じゃねぇか」
「何が?」
「何がって、テストが」
「…テスト?」
「テスト」








「あ、」





わっすれてたあぁぁぁああぁっっ!!!!!
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