「マジ数学とか爆発しろ」
「そんなことほざいてる暇があったらとっとと問題を解け」
「うっさい文次なんて仙蔵より頭悪いくせに調子乗りやがって!ここマジでわかんないんで教えて下さいお願いします!」
「どっちなんだよ」
現在、私はお隣さんである文次郎の部屋に上がり込み、机の上にテキストを置いて土下座をしていた。
どうしてこんなことになっているのか。それはもちろんこの宿題が原因である。
私は理数系が大の苦手だ。本気で授業が暗黒の時代に突入するぐらい苦手だ。一回一回のボスがあり得ないくらい強い。
しかし先生に渡された宿題は全てそちら関係のものだった。
困ったことだ。私が一人でこれを終わらせることなど到底無理な話だし、かといってクラスで聞けるような友達もあまりいない。留三郎に聞くのも何かいやだし、兄さんは受験勉強があるから邪魔をしたくない、仙蔵に言えば馬鹿にされそうだし、年下は論外。ここまで考えると暇そうなやつはこいつ、文次郎しかいなかったのだ。
最初はバカタレだのなんだのうるさかったが、結局は教えてくれることになった。しかしさすがは年上、教えて方はうまいのだ。
「お、おおぉぉぉぉ!!半分以上も終わった!」
初めてから3時間くらいだろうか。いつのまにか宿題の山が半分ほどに減っていた。たった3時間でこれほどまで減るとは、なんだか感動してしまう。
「うるさい。いいからとっとと続きを始めろ」
そう言いながらため息をつき、文次郎は立ち上がった。
「あれ、文次どこ行くの?」「飲むもの取ってくる」
扉を開けて、文次郎は部屋を出ていった。
一方私だが、文次郎みたいな見張りがいなくなると緊張も無くなってしまう。気が抜けてしまうものだ。シャーペンをクルクルと回し始めた。
部屋に戻ってきた文次郎が、寝そべりながら漫画を読んでいる私を見つけてバカタレ!と叫ぶまで、あと3分。