また、雨だ。このところ、毎日降り続けている。そのせいで、毎日毎日曇り空を拝みっぱなしだ。太陽が顔を出したのは何日前だったか。いくら梅雨の時期でもこれは長すぎやしないか。おかげで洗濯物が溜まりに溜まっている。は組の団蔵と虎若にとっては好都合だろうが、伊助にとっては洗濯物と一緒にストレスしか溜まらないだろう。私も洗濯は好きではないが、ここは伊助に同情する。
私は雨が嫌いなわけではない。どちらかと言えば雨は好きだ。雨の匂いはいいものだと思うし、雨が降ってるのを見るのも好きだ。しかし、こう何日も見ていれば流石に飽きてきてしまうわけで、
「暇だぁ」
その場でバタンと横になった。ちなみにここは同学年の三年ろ組である三人の部屋だ。することがなかったから、遊びにきただけである。
「そんなら作兵衛手伝ってやれよ。左門のやつ、まーた迷子になってんだから」
お前がいうのか、無自覚方向音痴。
「せっかく出かける予定だったのによぉ」
「え、どこ行こうとしてたの」
「団子屋。作も左門も行きたがってたから」
作兵衛……お前は自らフラグ的なものを作ってないか?三人でお出かけなんて、手が四本なきゃいけないだろ。
でも、いいなぁ。私も皆と出かけたいな…。最後に四人で出かけたのなんて、何ヵ月前だろ。
「雨なんてふらなきゃな…」
ぽつり、と三之助が呟いた。振り向いて彼の顔を見る。三之助は部屋の中から、遠くを見つめていた。その方向には、今日行くはずだった団子屋があるのだろうか。それならきっと逆の方向に店はあるだろう。
「なぁ」
「何?」
「今度さ、」
「うん」
「一緒に行こうか」
団子屋。
三之助が雨に消されそうな声で言った。しかし、私にはその言葉がはっきりと聞き取れた。
「何、口開けてんの」
四郎兵衛みてぇ。
私のほうをじっと見ながら、三之助は言った。
「え、あ、いや……三之助、心読めるのかなと思って」
「何でだよ。あ、もしかして嫌だった?団子」
いつもは無表情な三之助が、私の見て悲しげに言った。なんだかこっちまで悲しくなってくる。
「嫌じゃ、ないよ。行きたい」
私は今まで横になっていた体を起こして身を乗り出しながら言った。三之助はそんな私を見て驚いた様子で目を大きく見開いた。
「雨、止むといいね。四人で早く団子、食べ行きたいよ」
私は精一杯の笑顔で言ったつもりだった。しかし三之助は、私の言葉を聞くと一瞬嫌そうな顔をして、重々しく口を開いた。
「……二人で、行こうよ」
この言葉こそ、雨で聞こえなくなれば良かったのに。そうだったら、きっと私の顔は意味なく赤くなることはなかっただろうに。
あーあ、早く雨やまないかなぁ。やっぱり私、雨は嫌いだ。