※現代パロ、年齢操作





こんなに悲しい祭りが存在するとは、生まれて13年間思ったこともなかった。毎年一緒に来ていた子達は皆彼氏と行く約束をしてしまったらしく、何年間か続いていた伝統的なものは終わってしまった。
というか皆して彼氏がいるとかマジリア充だなどういうことだ。
ちなみに私は彼氏いない・好きな子いない歴13年だ。


など言いつつ、私は今年も祭りに来てしまった。しかも一人でだ。悲しいことは分かっていたが花火を見たかった、ただそれだけだ。
しかし失敗してしまった。今回は一人だというのに早く来すぎてしまった。あまりにすることがないため、辺りをふらつくことにした。
まだ6時だというのに人がけっこういる。皆そんなに暇なのか。ひとまず屋台でも見てまわろう。



この祭りはあまり大きなものではないが、屋台の数は少なくはない。ひとまず私は食べたかった水飴を買った。
それをひとかじりして周りを見渡すと、一つの屋台が目についた。射的屋だった。おじさんの後ろには幾つかの商品が並べられていた。その中になんとも可愛らしい熊の人形が置かれていた。なんだあの熊さん人形、超可愛いじゃないか!
私の足はいつのまにかそちらに向かって動いていた。
しかし私は射的屋の前で立ち尽くした。なぜなら私は超ノーコンなのだ。挑戦しようとしたところで確実に50円が無駄になるだけだ。名残惜しかったがしかたない、諦めよう。屋台に背を向けたときだった。


「あれ、名前さんやんないの?」

振り向くとそこには甚平を着た男子がいた。よく見ると、同じクラスの虎若君だった。彼と話すことはほとんどないので少し驚いた。

「えっ、な、何を?」
「射的。あれ欲しいんじゃないの?」

そういって彼が指差したのはあの人形だった。

「欲しいけど…私あんまり射的とか得意じゃなくって…」
「ふぅん…」

虎若君は後ろを向き、人形を見た。すると私の方に寄ってきて、「ちょっと待ってて」と、私に持っていた綿菓子を渡しながら言った。
彼はそのまま射的屋に向かうと、おじさんにお金を渡して銃を手にとった。
そしてそれを構える。その先にあるのはあの人形だった。私は急いで虎若君の横に行った。

「虎若君、いいよわざわざとろうとしなくたって!」
「大丈夫大丈夫、俺こういうの得意だから」

虎若君は人形に狙いを定めたまま言った。それを見ていると、まるで彼がプロみたいだ。

パンッと音が鳴った。その音に少し驚きつつ人形をみると、見事にそれは倒されていた。

「……すごい」

虎若君は店のおじさんから人形を貰うと、それを私の手に握らせた。

「はい」
「え、でも悪いよ!これ虎若君がとったものだし、」
「いいよ。俺がもっててもアレだし」
「……ありがとう」
「どういたしまして」

虎若君はニッコリと笑って私が預かっていた綿菓子を受け取った。

「あれ、顔真っ赤だけど…どうかした?」
「なんでも、ない…」

顔が赤いのは、きっと授業の水泳で日焼けしたせいだろう。そう思いたかったが、どうやら私の好きな子いない歴13年の歴史は、今日で幕を閉じるらしい。
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