兄妹愛いち
※カタクリの首巻きの下を知らない人はネタバレになるので注意
※兄妹注意
突然だが、私は漫画ワンピースの敵キャラクターであるビッグマムと呼ばれるシャーロット・リンリンの娘シャーロット・ルイに転生した。
年齢はプリンより少し上の姉だ。
そんな私はワンピースは大好きだったのでこの世界の知識や未来を知っている。
だからこそ言える…うん、すごく不安。
転生して可愛い容姿を手に入れたもののビッグマムの子なので大して強くもない私はさっさと政略結婚に使われてしまうだろう。
だから私は考えた。
兄弟にめっちゃ媚び売っておこうと。
ママであるビッグマムはちょっとアレな性格だけど、なぜか兄弟たちはある程度まともだと原作で知っている。
なので私はもうお兄たま、お姉たまのテンションで媚びを売っておいた。何かあればふぇぇ、結婚なんていやれすって感じで力になってもらうため。
可愛い私の猫かぶりはそれはもう効果があった。
その努力の甲斐あって私はカタクリお兄ちゃんから悪魔の実をもらうことができた。
それなりに有用な能力だったからママも年頃の私をまだ結婚に使っていない。
ワンピースを読んでいてカタクリはとても好きなキャラクターだった。
正直最初はプリンちゃんが可愛すぎてカタクリはあまり眼中になかったけど、大口開けてドーナツをうましうまししているカタクリにズッキューンとハートを持っていかれた。
だからカタクリお兄ちゃんに少し多めに懐いていたかもしれない。だってお兄たま可愛いもの。
例えば年齢にそれなりに差があったから、小さい時に大きなカタクリお兄ちゃんによじ登ろうとすると黙ってしゃがんで背中に乗せてくれたり。
お兄ちゃんかっこいいと連呼していたら気恥ずかしそうに頬を掻いたり。
一緒にゴロゴロして遊ぼうと誘えば本当はゴロゴロが好きな癖に自分はただ座るだけで膝枕ならぬ足枕をしてくれたり。
もう本当に最高のお兄ちゃんである。
思わず「私将来お兄ちゃんと結婚する」と言ったら、「大人になったらな」と妥当な大人の対応をされた。
もう、カタクリお兄ちゃん大好き!可愛い!
でも主人公が来たらどさくさに紛れてこの島から逃げるつもりだけどね。
政略結婚反対!だめ絶対!
(カタクリ視点)
俺には兄弟が多いが、特に俺は年の離れたルイという妹を可愛がっていた。
ルイは小動物のように誰にでも愛想を振りまいていたが、俺には特に懐いていた。
だから妹として可愛がっていた。
そのせいか将来は俺の嫁になると無垢に言ってきたときは驚いた。小さい頃特有のものだろうが悪い気はしなかったから大人になったらなんて言葉を濁した。
初めて作ったというお菓子をまっすぐ俺に誇らしげに持ってきたときなど、他の兄弟よりも好かれていると強く感じ愛おしく思った。
俺のことをかっこいいと信じる妹。だから俺は間違っても横になってお菓子を食うことのない常に妹の望む格好いい兄を保持した。
妹の前では俺は誰よりも格好良くありたい。
そう思う程、気が付けば妹は大切な存在になっていた。
だがビッグマムの子である以上、妹はいつかどこかに嫁にやられてしまう。
だから俺はルイへ仕事で手に入れた悪魔の実を与えた。
それは有用なものであったから婚期を遅らせることができたが。
ルイは見目も良く、料理も上手いから向こうからも数多く婚約の話がきている。
一度以外全て目に触れないうちに握り潰しているが。
俺のいない間に一度見合いが行われ上手くいきかけたときなど、思い出したくもない。発狂するかと思った。
もちろん根回しをして潰したが。
「カタクリお兄ちゃん?」
城の廊下を歩きながらルイについて考えているとちょうどバスケットを持ったルイから話しかけられた。
「茶の誘いか」
「うん。さすがお兄ちゃん、見聞色で分かったの?」
「使うまでもなく持っているバスケットを見れば誰でも分かる」
そう言うと、ルイは持っていた木で編まれたバスケットを見てから俺に視線を戻すと、はにかむようにして笑った。
「あのね、ナッツのドーナツを焼いてきたから一緒に食べたいなと思って。お兄ちゃんこれから時間あいてる?」
「ああ、問題ない」
「やった。なら一緒に食べよう。カタクリお兄ちゃんと一緒に過ごせて嬉しい」
本当に嬉しそうに笑うルイを見て、愛おしく思うとともに俺はやはりルイを手離すことはできないと思った。
俺の側から離れることは許さない。
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