三人で夏祭り 後
てっきり二人だけかと思った夏祭り、なぜかバーボンも来て三人で行くことになった。
私たちは予めライが予約していたお店で浴衣を来た。ライは黒に近い灰色、バーボンは藍色の浴衣だ。
さすが元が無駄に良いだけあり似合っている。
そんな事よりも私は早く夏祭りを満喫しようと、祭りの会場へきたのだが。
「あのよろしければ一緒に花火を見ませんか」
「かっこいいなと思って」
と私のことが見えていないのか祭りの会場に来た二人は すごくナンパされている。
二人とも断るけど、女の子たちは皆で渡れば恐くないというようにどんどん人だかりができていく。
それを有名人かと勘違いしたおばあちゃんが撮影しようとしていたりしてとても混沌としている。
これでは祭りを楽しめないじゃないか。
私は寂しいライに付いて行ってあげるという口実を綺麗さっぱり忘れて、一人祭りを満喫することにした。
ライがプレゼンしてくれた通り日本の祭りは色鮮やかで面白かった。
わたあめ、クレープ、お好み焼きなど迷ったけどたこ焼きを買って食べながら歩いていると、「はろー」と下手くそな英語で話しかけられた。
声の方を見ると同い年くらいの男の子だった。
その後ろに一緒に来たのだろう離れたところでニヤニヤとしてこちらを見ている集団がいる。
「こんにちは」
「こんにちは。日本語話せるの?」
「話せるけど」
「良かった。俺英語苦手で」
そう恥ずかしそうに言う男の子に私はでしょうねという言葉を飲み込んだ。空気ぐらいは読んであげる。
「もし良ければ、俺と一緒に花火見ない?」
「花火?」
「うん。俺、地元がここで良い場所知ってるけど」
「それなら大丈夫。私の連れたちはVikipediaより優秀だから間違いなくもっと詳しく知ってるわ」
男の子の誘いは悪いけどあっさりと断った。
一応一緒に来たのに別の子と遊んでも悪いし。
「ルイ!勝手にどこかに行かないで下さい」
「Vikipediaとは酷いな」
男の子の誘いを断りそろそろ二人を探しに行こうかなと思った良いタイミングでVikipediaことバーボンとライは現れた。
「そっか、一緒に来てた人がいたんだね。ごめんね。じゃあ」
現れた背丈ある二人の大人に怯んだのか男の子は多少早口にそう言うと一緒に来ていた子達の元へ戻って行った。
皆に小突かれている男の子の見つめた後私は二人を見上げた。
「あの集団から抜け出してきたの?」
「ああ、バーボンが大きな声で『僕たちは既婚者ですから!』と叫んでな」
その光景が楽しかったのかライは小さく笑うと、バーボンはライを睨み付ける。
「貴方もついでに助けてあげたんだから感謝して下さいよ。それにカシス、どこかに行くならきちんと行って下さい。どれだけ探したと思っているんですか」
「だって二人がナンパされてるのが悪いんでしょ。あっ、そうそれでね」
私は思い出してバックから戦隊物のお面を取り出してライに黒の、バーボンに赤のを手渡した。
「これをしていれば声かけられないでしょ。仕方がないから二人にあげるわ」
我ながら良いものを見つけたと思い笑顔で言うと二人はお互いの顔を見合わせた。
「綺麗……」
やはり二人とも花火のよく見える場所を知っていたらしく私たちは河川敷の草の上に薄いシートを敷いて花火を見た。
バーボンとライが二人ともこの場所を言ったときは面白かった。
ジンと程ではないけどあまり仲良くない二人が同じ意見だなんて。
しかも三人で花火を見上げるなんて。
両隣に座っているバーボンとライを見る。二人とも頭にお面を付けている。
私の頭にもだ。
あのあと、バーボンがお礼にと買ってくれたものだ。
彼曰く男二人でお面を付けるのは嫌らしい。
バーボンは同じ戦隊物のピンクを買ってくれようとしたけど可愛くないからと断り私の頭には白猫のキャラクターのお面がある。
「……今日は一緒に祭りに来てくれてありがとう」
私は赤く染まる花火を見ながら二人にそういうと、言葉は帰って来なかったけどなんとなく二人とも微笑んでくれたような気がした。
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裏側
男の子にナンパされているルイを見つけて、バーボンはルイへ駆け寄ろうとするのをライに肩を捕まれ止められた。
「何をするんですか」
「俺たちより同年代の子といたほうがあいつもいいだろう」
そう言うライにバーボンは言葉を詰まらせた。
確かにこんな硝煙の香りのする自分達よりも普通の子といた方がルイにとってみたら幸せかもしれない。
それはバーボンも分かっている。けれど。
足を止めながらもルイを見つめ続けるバーボンにライは息を吐いた。
「若いな」
「本当ですね」
それはバーボンに言った言葉だったが、バーボンはルイを顔を赤らめながらナンパする男に言ったものだと勘違いしたらしい。
そうしてルイが誘いを断るのを見て二人はルイへと近寄った。
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