ふざけるな!(カクと動物嫌い)

カクは長官を殺したくなった。食べてみてのからの賭けだと?
悪いのは自分の無知にもあるが、長期任務の褒美である悪魔の実がまさかゾオン系のものだったなんて、なんて自分は運が悪いのだろうか。

実を食べてから大広間へと行くと任務の為に遅れてやってきていた、CP9のメンバーであり年上のユウがジャブラと喧嘩をしていた。
ユウをこの目で見るのは何年ぶりだろうか。


「犬臭えんだよ。この犬野郎がおれの半径一キロ以内に入って来るんじゃねえ!」

「犬じゃねェ、狼だ!おれだって好きでてめえに近づいた訳じゃねえよ。つーか、おれがどこで何をしようがおれの勝手だ狼牙!」


ユウは極度の動物嫌いである。何故かは本人が話そうとしないので知らないが、近くに動物が来るとどんな種類でも殺しまではしないものの酷く拒絶をする。
それはゾオン系の能力者も同じで一応はビジネスなのでルッチやジャブラと同じ部屋にいることはあるが、必ず距離を置くし近寄って来ようものなら攻撃的になる。


「おっ、カク戻って……」


おまけに彼は鼻も良い。ユウは部屋に入って来たカクにすぐに気が付くと言葉をかけ、その言葉が終わる前にカクから距離を取った。


「カク、おまえ臭い。何か動物でも触ってきたのか?」

「ウシウシの悪魔の実を食ってきたんじゃ。そのせいじゃろ」

「なっ……!?」


ユウは驚愕し青い顔をする。
ふだん自分を可愛がってくれているユウなら、もしかしたらルッチやジャブラとは違いゾオン系になったとしても気にしないかもしれないとカクは少なからず思っていたが。やはりダメなようだ。その表情が物語っている。


「はあ!?おい、カリファも実を食ったんだろ。もしかしてカリファもゾオン系の実を食ったのか?」

「いんやカリファはアワアワの実じゃ」

「まじかっ、よかった!!」


ユウはカリファがゾオン系ではない事を聞くと涙を流して本当に嬉しそうに喜んだ。
そしてすぐにワシにその満面の笑みを向けると


「カクもこれからはおれに近寄るなよ!」


とあんなに可愛がってくれた事がうそのように、悪気もなくそう言った。



ああ、この男を殺してやりたい。



*****


ユウが動物嫌いなのは昔見せ物として動物に家族を殺された為である。
自分だけはなんとか幸運が幸運を呼び逃げ出す事ができたが、それからユウは動物を見ると駄目だった。怖くて怖くて震えるし、排除してしまいたくなるのだ。
そのためユウは誰にも動物が怖いという情けない姿を見せたく無いから、強がり震えないように努力していた。

だから、CP9に所属して2人もゾオン系の能力者がいた時は軽く絶望した。
逃げ出したいとさえ思ったが、ここから逃げる事は死を意味していたのでユウは逃げ出す勇気は無い。怖くて仕方が無かったが、なんとかなるべく近寄らない事で我慢した。

それから自分に懐いてくれるカクという可愛い後輩もできてCP9も悪くは無いと思っていたのに。長期任務から帰ってきたので任務の完了祝いに一緒に飲もうと少し高い酒を奮発して用意していたのに、まさか彼までゾオン系の能力者になってしまうとは思わなかった。

カクがゾオン系の能力者になった事を知り蒼白になりながらもユウはすぐに同じように実を食べたカリファの事を聞くと彼女はゾオン系では無かったと知って、涙が出るくらい嬉しかった。
これ以上動物園になっていたら本気で挫けていたと思う。


だから嬉しくてそのまま笑顔で、カクを感情に任せて殺してしまうと困るので自分に近寄るなよと言うと。カクはすごい形相で獣人化するとキリンのくせにまるで肉食獣のように襲いかかってきたのでユウは本気で逃げた。