ぴえろ.A
「………こんにちは、クザンさん」
「どうした?今日はやけにご機嫌斜めじゃない」
初等学校からの帰宅途中に青雉クザンと出くわし、おれはいかにも不機嫌ですといった顔をそのままクザンに向け挨拶をした。
クザンがここにいるという事はうちに来る途中だったのだろうか。
「別に…不機嫌じゃない」
「いや、どう見ても不機嫌じゃないの。なに?学校で嫌な事でもあったの?」
そんな訳無いだろっ、と言いたいところだったが。その言葉は事実だったので、おれはクザンから目線を横に逸らした。
「違うし」
「なるほど、学校で何かあった訳ね」
本当、ユウって分かりやすいよね。とクザンは息を吐いて言う。
「何かあるなら抱え込まずに相談しなさいよ」
「別に、大した事じゃない」
「そう?なら言ってくれても良いんじゃねぇの」
心配そうに聞いてくるクザンに、おれは言葉をつまらせる。
確かに別に言っても良いけど。恥ずかしいんだ。
でも、自分で大した事がないと言ってしまった以上、話さないのは少し負けた気分がする。
「今日、エイプリルフールだったでしょ」
「ああ、そういやそうだっけ」
「うん。それで学校の友達にいっぱい騙されただけ」
「それは………」
……自分で聞いておきながら、なんとも言えない表情で見下ろすのはやめろ。
俺だって精神年齢的に年の離れている奴に騙されて、情けないと思ってるんだから。
だいたい、よくある私できちゃったみたいっていう嘘くらいならおれだって分かる。
でも、もっとどうでもいい。『ユウ、先生が呼んでたぞ。』とか『今日、社会のテストだって』とかそういう細かな嘘の連発は騙されても仕方ないだろ。
「まあ、ユウは騙されやすそうだからね。…うん。大人になってからもそれだと困るだろうけど、子供なんだから仕方ないし、愛嬌あって良いんじゃねぇの」
「子供じゃない!」
クザンはフォローのつもりで言ったのだろうが、たしかに今は見た目子供だけど中身は大人だ。
まったくフォローになっていないしむしろ傷口をえぐっている。
子供扱いするクザンにぐるぐると唸ると、おれの頭をクザンはポンポンと宥めるように撫でる。
「そんな可愛いユウがおれは好きだけどね」
「だから、そういう恥ずかしい台詞を言うな!」
はやく大人になって、クザンをギャフンと言わせてやる。
――――――
ワンピースの世界なので春休みとか気にしない。