my friend
セドリックに友達から始めましょうと提案したのは良いですが。2つ困ったことがありました。
1つは、改めて考えてみますと友達とはどのように接すればいいのでしょうか。
もちろん友達との付き合い方は知っています。ただ、いままで避けてきた人と改めて友達になるというやりかたが、少し、不安でした。
ですので心配をしていましたが。
あの日からセドリックは私を見かけるたびに、初めは恐る恐るといった様子でしたが、話のしやすい話題で話しかけてきて下さるのでとても助かりました。
彼のお陰で自然な会話ができていると思います。
そしてもう一つ、これも友達になると提案した時には忘れていましたが。彼はホグワーツでとても人気者です。
彼は成績トップで対抗試合の代表選手であり、クィディッチの花形であるシーカーであり、性格も良く容姿もいい方です。
そんな彼は当たり前ですが人気があります。
ですので私に彼が親しく話しかけるのを見て、前にも何度かありましたが、私もきちんと話を返すようになりましたのでまた改めて「セドリックと付き合っているの?」と自寮他寮問わずに何度も聞かれました。
私はそれに「ただの友達です」とだけ答えています。今はなにか嫌がらせをされるわけでもありませんので、面倒くさいというだけですが。面倒くさいです。
そもそもどうして付き合っているとまで話が飛躍するのでしょうか。
おそらくはいつもセドリックが私に嬉しそうに、薄く頬を染めて話しかけてくるからでしょうけど。
「ミリアっ!!」
そう、今のように。
放課後授業も終わり食事までの間の時間。人通りの多い廊下を一人散歩をしていますとセドリックから声をかけられました。
もしセドリックに尻尾があるのなら振り回していそうなくらいにまっすぐと嬉しそうに私に駆け寄ってきます。
そんな駆け寄ってきます彼を見ますと、なんだか恥ずかしさから少しだけ逃げたくなりますけれど。友達ということですので逃げはしません。
それに、先ほども言いましたが人通りの多い廊下です。逃げるなどというそんな恥ずかしい行動をあまりしたくはありません。時の人であるセドリックはただでさえ今人目を多く集めていますし。
視線の中には私を快く思っていないものもあります。何かしてこない限りは気がつかないふりをするつもりですが。
「セドリック、いかがなさいましたか」
「ミリアを見かけたから。どこか行くの?」
「いいえ。少し散歩をしていただけです」
普段はあまり出歩かない私ですが、最近は考え事をしながらよく散歩をしています。
今はもう下手に出歩いても偽者ムーディが捕まったので安心ですし。
動いて原作へ介入をしてしまうことをセドリックの運命を変えたことで半ば諦めていますので、それもあり動くことが増えたと思います。
だからといって進んで原作へ介入したいとは思いませんし、グリフィンドール生とも仲良くはしませんが。
「なら僕も君の散歩に一緒に行ってもいいかな」
「構いませんけど。歩くだけで特に何をする訳ではないのでつまらないかもしれませんよ」
「僕はミリアがいるだけで嬉しくて、つまらなくなんてならないよ」
………少し頬が引きつりました。
彼が実際幸せそうににこにこと笑っているので、彼の性格から裏のない本当に私を好いてそう言っているのでしょうが。
セドリックは惚れ薬を盛られている訳ではないですよね。と考えてしまうのは仕方がないかと思います。
一度魔法薬学に詳しいスチュワートに相談しましたら、「素であれだ」と読んでいる本から顔も上げずに返事を貰いましたのでそういうものではないようですが。
本当に、どうして彼は私なのでしょうか。
「構わないのでしたら。それなら一緒に行きましょうか」
「うん、もし行くところが決まっていないのなら温室の近くのハープ草でも見に行かないかい?今の時期だけ妖精たちがハープ草の音色に合わせて歌っているんだ」
ハープ草とはハープのような音楽を奏でる草の総称です。薬草学の温室の近くの草原には数種類のハープ草が植わっているので音色が時期によって異なります。
この時期に歌を好む妖精とは花妖精の仲間でしょうか。
そんな二つの魔法生物が奏でる音楽でしたらきっとすばらしいものなのでしょう。
「それは楽しそうですね」
「すごく綺麗な音色なんだ。ただ見ごろが夏休みに入る時期だから、もし時期が遅れたらその年は聞けないけど、今年はもう奏でていたらしいよ。だからミリアと一緒に行きたいと思っていたんだ」
「そうですか。誘ってくださりありがとうございます。セドリック」
「ううん。僕の方こそ誘われてくれてありがとう」と頬を染めて笑うセドリックを周りが見れば、確かにこれでは付き合っていると誤解されてもおかしくはありません。
私は素直にセドリックのしてくださった提案は嬉しいと思います。綺麗なものが嫌いな女性はいないでしょうし、私も嫌いではありません。
彼の優しさはとてもありがたいものです。
けれど、彼はいつまで私のことを好きでいてくださるのでしょうか。
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[mokuji]