first contact×girl:a

 生まれてから8年、私の歳は8つとなりました。
 時間とは早いものです。
 親がいなくなってからずっと屋敷で読書をしていると、いつの間にか三年の月日が流れていました。

 屋敷にはそれはもうたくさんの本がありました。基礎的な魔法の本から、禁術の本までそれはもうたくさんと。
 その中にはもちろん服従の呪文、磔の呪文、死の呪文の使い方もあり、私はその内容に関係なく朝から夜まで様々なジャンルの本を読み漁りました。


 けれどもそんな生活を三年間続けて、さすがにこのままでは駄目かと思いました。
 一応私は成長期の子供なのでそれなりの運動も必要です。
 もちろん最低限はしているつもりですが、外の世界と触れ合うこともしておいたほうが良いかもしれません。


 なので、私は屋敷しもべ妖精のテールにどこかに出かけたいと言いました。
 そしたら彼は泣いて「ならば、”ダイアゴン横丁”などいかがでしょうか」と言うので私はそれがどこにあるのだか分かりませんでしたが頷きました。


 そして、現在私は”ダイアゴン横丁”ではなく”ノクターン横丁”にいます。


 なぜって?
 ・・・暖炉から移動する時に移動用の粉が鼻に入り、行きたい場所を言えなかったのです。
 
 気が付いたら私は体中をススだらけで誰も使っていなさそうな、蜘蛛の巣の張る家の中にいました。

 私が呆然としていると、テールが私の前に一瞬で現れました。
 これは姿現しという魔法らしいです。

 テールは汚れた私に魔法をかけキレイにすると、オウオウっと泣き始め私の無事を喜んでくれました。


 「ここはどこ?」

 「ダイアゴン横丁の隣にある”ノクターン横丁”でございます!」

 「ノクターン横丁?」

 「はい、あまり治安の良くない場所でございます。お嬢様、わたくしめがお守りいたしますので早くここから出ましょう!」

 「ええ」


 私はテールに連れられ家から出ました。

 たしかにテールの言うとおり、外は治安が良くないことが一目で分かりました。

 そこはまだ、明るい時間なのにまるで夕暮れのような薄暗い雰囲気を醸し出しています。

 人通りもほとんどなく、立ち並ぶ建物は黒ずんでいて、たまにあるお店ではおまえを呪ってやろうか?と言われているような趣味の悪いものが展示されていました。


 「ここをまっすぐ行くとダイアゴン横丁に出ます」

 「そう、・・・・今日はもう帰りたいわ。テールのおかげでキレイになったけど。お風呂に入りたい気分」

 「分かりました。それでは漏れなべの暖炉から帰りましょう」

 「漏れなべ?」

 「はい、ここに来る人のほとんどが通る店でございます」

 「なるほど、分かりました。テール、案内をお願いします」


 ・・・テールがいて良かったと心から思いました。

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