truth

 「遠まわしにおっしゃらないで直接言われたら如何ですか?回りくどいです」


 セドリックは推し量り慎重に言葉を選んでいる様子ですが。

 この状況で何を躊躇う必要があるのでしょうか。別に回りくどい言い方などする必要はないと思いますが。

 セドリックは何をそんなに慎重になっているのでしょうか。


 「確かに回りくどいかな。本当のことを言えば僕は昨日のことについて、ミリアが知っていること全てについて知りたい」



 「けれど、それをミリアが話したくないのなら。僕は聞こうとは思っていないんだ」


 まるで計ったかのようにセドリックの言葉に合わせて湖から冷たい風が流れてきました。
 風が私たちの髪を揺らしましたが、私はそれを気にしている余裕はありません。


 私はセドリックの言葉に驚きました。


 聞くつもりはないだなんて。

 ………セドリックはこの場にあっても私の意志を優先して下さろうとしているようです。

 本当に彼は優しい人です、が。
 私はセドリックのように性格は良くありません。


 「良いのですか?貴方が聞かないのでしたら私は貴方に何も話しませんよ」


 話さなくても良いのなら私にとって話さないに超したことはありません。



 「それなら、…ミリアが話したくないのなら僕は構わないよ。何も聞かない」


 セドリックは私を真剣な様子で見つめ答えました。信じられませんが本心からの言葉なのでしょう。



 「けど。そのかわりに別のことについて聞きたいことがあるけど。良いかな?」

 「別のこと、ですか?」


 セドリックは僅かに緊張を滲ませたようにそう仰いました。

 課題についてのこと以外に聞きたいこととはいったい何でしょう。
 少し思案してみましたが見当がつきません。

 ですが、セドリックの聞きづらそうに言う様子に私は警戒しました。


 「貴方が聞く分には構いませんが。私が答えるかどうかは質問によります」


 私はセドリックが何を聞きたいのか予想ができませんでしたので、答えるか保証はないと先に伝えます。


 「できれば答えて欲しいけど、答えられないのならそれで良いよ。それが答えだろうから」


 ………それはつまり、それは私が答えないことがイエスかノーに直結する質問なのでしょう。

 それなら確認をとらないで尋ねればいいと思いますが。その方が私に心の準備を与えずに答えを得る事ができます。


 なんだかだんだんと、このような考えをしている自分が本当に狡猾な人間のように感じていきます。
 いえ、セドリックが正直者過ぎるだけで私は普通でしょう。………おそらく。


 「それで貴方はいったい私に何を聞きたいのですか?」


 心の準備だけして私がセドリックへ話を促しますと、セドリックは一度息を呑んでから少しぎこちない様子で、けれどすぐに意を決したように口を開きました。


 「まず前提として。君は気がついているかもしれないけど。僕はミリア、君の事が好きなんだ」






 残念なことですが、気がついていませんでした。

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