truth
私は一度セドリックへ恋愛感情はないことを伝えてから続けました。
「それにセドリック、告白をして下さったのにこんな事を言うのは申し訳がありませんが。貴方は本当に私を好きなのですか?」
「っ、好きだよ」
私の質問に傷付いた様子で、しかし尚もそうおっしゃるセドリックに少しだけ罪悪感を感じましたが。
………申し訳ありませんが私はそれを信じることはできません。
「貴方は私を好きだとおっしゃられますが。私と貴方がそれなりに話をするようになりましたのはごく最近のことかと思います。ですので、セドリック。貴方も私のことをよくは知らないでしょう?」
「………そうかもしれない。けど、僕は君のことをずっと見てきた。四年間、もしくはそれ以上この気持ちは変わらなかったんだ」
「それはただ単に貴方が私を良いように瞳に写していたからかもしれません」
私を理解していないのか、勘違いをしているのか。
セドリックの今までの言動を振り返ってみても、そのどちらかによりフィルターがかかっていることは間違いないでしょう。
今だって私は貴方を傷つけていますのに。それでも好きだと言うセドリックのことを私は信じられません。
もしセドリックが私の偶像を愛しているのでしたら、私はそれに応えられません。
応えられませんが。
「セドリック、貴方が聞きたいことは私がどうすれば貴方のことを好きになるか、ですね」
「うん、そうだよ」
「でしたら、まずは友達から始めませんか?」
本当でしたらきっぱりと断ることですが、私はセドリックに昨日頼みを聞いていただいたという恩がありますから。
可能な譲歩を提案いたしました。
「友達、からかい?」
「はい。学生の時間もあと一年ありますし、お互いに好きかどうか見極めることにしませんか?それでも私のことを好きだとおっしゃってくださるのでしたら私も考えます。………それでは嫌ですか?」
どうしたらセドリックを好きになるのかという質問とは少しズレてしますが。
私がセドリックを好きになるとしたらそもそも彼の事を知らなければなんとも答えられませんし。
それに彼が私を知れば勘違いであったと気がついてくださるかもしれません。
「嫌なわけない!嬉しいよ、ミリア。僕は君に告白をしてもただ断られるとばかり思っていたから」
セドリックは私の提案に思ってもみなかったよう驚いて、首を横に千切れそうなくらいぶんぶんと振り、きらきらと表情を明るくしてそう受け入れて下さいました。
彼は表情が豊かで分かりやすいです。たまにわからない時もありますが。
喜んで下さっていることは伝わりました。
………それにしても、セドリックが私に好意を抱いていらっしゃっいましたとは。
私が変えるまでもなく原作と私が知らないうちに離れていたのでしょうか。
いえ、ときどき原作と異なる小さな箇所を見つけたことはありましたが。それは自分が関わっての変化でないので気にしないでいました。
けれどもう、確実に私の知るシナリオの物語には戻れません。
それでも。
目の前にいるセドリックを見て、彼が生きていると改めて感じますと後悔はありません。
素直に良かったと思います。
「そうですか。それではこれからよろしくお願いいたします」
私がセドリックへそう言いますと、セドリックはお礼とこちらこそよろしくと幸せそうに言いました。
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