truth

 最終課題の次の日、私は朝食の席でセドリックから放課後に話がしたいと言われました。

 本当は話などしたくはありませんが、それは予想通りのことでしたので私は了承しました。


 

 待ち合わせ場所は学校の湖のほとりです。

 放課後となると夕方ですが、今は夏休み前ですので暖かいため、外で会話をするには良いでしょう。

 屋外でしたら誰かが盗み聞いている可能性も低いですし。
 とはいえこの世界は魔法が許されていますので油断は禁物でしょうが。その可能性を踏まえ気をつければ問題はありません。






 それから時間が過ぎ。
 私は放課後、指定されていた時間に湖へ行きますと今回はセドリックの方が先に来ていました。 

 オレンジ色の夕日が湖面と彼を照らしてそのせいで彼本来の髪色が分からなくなっています。
 セドリックは普段と変わりない様子で、私に気がつくと優しい笑みを浮かべました。



 「すいません。お待たせしましたか?」

 「いや、待ってないよ。僕も今来たところだから」

 「そうですか。でしたら良かったです」


 差し障りのない言葉を交わし私は彼の正面に立ち、彼のほうが十分に背が高いので彼の精悍な顔を見上げます。
 朝にお会いした時も同じようにセドリックは不自然なほどに普段と変わりがない様子でした。ハリー・ポッターは生きて帰ってきたとはいえ、あれだけのことがありましたのに。

 私には彼が聞きたい事はある程度予測できますが、何を考えて私を呼び出したのか察することができません。

 ですのでまず、私はお礼を言うことにしました。


 「セドリック、昨日は約束を守ってくれてありがとうございました」

 「いや。僕がゴブレットに触れていたら危なかった。だからミリアには感謝しているよ」

 「感謝なんて必要はありません」


 私は本当に感謝なんて必要がないと思いましたので答えました。
 本来なら彼を見殺しにするつもりでしたし、それを回避したのも自分が後悔をしたくないからという自分の為でしかありません。
 ですので、感謝をされても困るだけです。

 そんな私の言葉に、セドリックは何も返さずに私をただ見つめました。
 すぐに何か質問をされるかと思いましたがおそらくは謀りかねているのでしょう。
 ただ沈黙が生まれます。


 …見つめ合っていても仕方ないので、私はその沈黙を破るために口を開きました。


 「セドリック。貴方が私をここへ呼び出したのは私に何か用があったのではありませんか?感謝の言葉だけなら私はもう失礼させていただきますが」

 「……うん。僕は君に話があって呼び出したんだ」

 「それは昨日の事ですか?」

 「それもあるよ。僕はミリアにたくさん聞きたい事がある」

 「はい。それで何を聞きたいのですか?」

 「とりあえずは僕が君に質問したいと、君が予想していること全てかな」


 私がセドリックから聞かれると予想していた事柄ですか。

 なるほど。

 少ない言葉で多くを語れるなかなか上手な物言い方かと思いますが。

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