first contact×boy:a

 (セドリック視点)


 8歳の時、僕は両親に連れられダイアゴン横丁にやって来た。ダイアゴン横丁に来たのはこれが二度目だった。



 銀行へ行くと言う両親に付いて行きながらも、僕は子供心から物珍しい店や物に目移りをしていた。
 最新の箒や、美味しそうな甘い匂い、初めて見る魔法製品。ダイアゴン横丁には目を引かれるものが沢山あった。




 それがいけなかったのだろう。気が付くと、僕は両親を見失なっていた。
 どうやら僕は両親とはぐれてしまったらしい。


 はぐれてから、僕は心細くてそこでじっとしていればいいのに両親を泣きながら探した。
 だけど大声で泣きながら探しても、両親はどこにもいなかった。

 しかも、僕は泣きながら歩いていたせいで気がつかないうちにどんどん怪しげな通りに入った。



 いつの間にか僕の周りには、頭まですっぽりとローブを覆う人や、ニタニタという擬音が似合うような笑い方でこちらをみる魔女など怪しい人ばかりで、僕は恐くてその場から動くことができずに泣いていた。 
 このまま僕はもう親に会えずに死んでしまうのではとさえ思った。




 僕が立ち止まって泣いていると、僕の立っている暗い道の奥から1人の女の子が歩いてきた。


 彼女はこの場には似つかわしくない身なりの整った、幼い女の子だった。背丈は僕と同じくらいだろうか。

 彼女の隣には目がギョロッと大きな屋敷しもべ妖精がいた。


 僕の家にはいないが、しもべ妖精の事は知っている。
 彼らはお金持ちの家に住み着いて、その家の主人の世話をするらしい。


 そんなしもべ妖精を連れているということは彼女は、お嬢様か何かなのだろう。



 彼女は僕の前まで来ると、歩く足を止めることなく僕をチラリと見た。

 近くで見ると僕より少し背が高かった。

 一瞬だけ僕を見ると、興味が無さげに目線を前へ戻して僕の横を通り過ぎようとしたので、僕は慌てた。



 もしここで1人になったら、もう一生ここから出られないとその時はそう思った。



 僕は慌てて彼女の背中の服を掴むと、彼女の足は止まった。

 それに気が付いた屋敷しもべ妖精は大きな目で不機嫌そうに僕を見る。
 屋敷しもべ妖精が恐かったけど、彼女がどこかに行ってしまうことを考えればその恐怖は小さいものだ。



 「お嬢様、いかがいたしますか?」
 「別にいいわ。行きましょう」


 しもべ妖精にそれだけ返すと彼女は、服を握り締める僕に構わずまた歩き始めた。
 彼女の高そうな手触りの良い服を掴んだまま、僕は彼女の後を付いて行った。






 彼女の後を歩いていくと、だんだんと町の明るい雰囲気が戻った。


 たくさんの魔法使いや魔女がいて。ソーセージの焼ける音や、様々なアイスクリームの甘い匂い、僕らくらいの子供たちの笑い声がしてきて冷えていた胸の中が温かくなってきた気がした。


 それと同時に涙も止まり、僕はなんだか恥ずかしくなってきた。同い年くらいの女の子に泣いてすがり、彼女が何も言わないことを良い事に僕は付いてきてしまったのだ。

 けれど、涙が止まった後も僕は彼女の服を離すのに躊躇した。服を離したらまた一人になってしまうと思ったからだ。


 しもべ妖精がチラチラと何か言いたそうに僕を見たが、僕はそれに気が付かないフリをした。





 彼女がやってきたのは“漏れなべ”だった。
 僕は見慣れた建物にはじめて顔を上げ、入り口の上にある看板を見た。


 帰ってきたんだ・・・

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