top of the tower2
「セドリック、貴方はなぜここに?」
「バックスに君がこの塔の上にいると聞いて来たんだ。そんなことよりミリア、泣いていたのかい?」
……スチュワートに聞いて来たのですか。
私はその事にもう一度驚かされました。
なぜ彼は私の居場所を教えたのでしょう。私がそうされて嬉しくない事を彼は知っているはずです。
それにこの知らなければ偶然と思えるタイミング。もしかしてクリスマスダンスパーティでセドリックが外に来たのもスチュワートが教えたからなのでしょうか。
そうでしたら少しもの申したいですが。
セドリックの登場で涙は止まりましたが、彼は私を心配そうな表情でじっと見つめてきます。そんなに見ないで頂きたいです。
本当に誰も来ないで欲しかったです。
「なぜ、私がいると聞いてここに来られるのですか。私と貴方は別の寮ですし、友人という間柄でもないでしょう?」
「…そうだね。君は僕が近くことをいつも望んでいないことは分かっているよ」
「あら、分かっていらっしゃったのですか。それが分かっているのなら私を構わないでくださいませんか?迷惑です」
「うん、ごめん」
セドリックは眉を寄せて、悲しそうな顔をして素直に謝りました。
そのまま早くいなくなって欲しかったですが。彼は一度伏せた視線を再び上げて言葉を続けました。
「けど。僕は自分勝手な事だろうけど、君と仲良くなりたいんだ。ミリア、君が何か悲しいことがあるなら力になりたいよ」
「私の力に?…セドリック、貴方って本当にお人好しですね」
何をおっしゃっているのでしょう、私の力になりたいだなんて。
そう思っていただける価値なんて私にはありませんよ。
私は貴方を見殺しにするのですから。
「僕は君が言うように優しくもお人好しでもないよ。ただ僕はミリア、君がつらそうな顔をしているときできることなら支えたい。それだけなんだ」
「…そのつらい理由が貴方でしたら貴方は近づかないでくださいますか?」
私はセドリックへそう聞いてみました。
セドリックがいることが苦痛という事はまったくの嘘ではありませんし。
だって彼がいなければ私はただ傍観しているだけで良かったのです。
「…やっぱり僕が原因なのか。もしかして、第二の課題についてのこと?」
セドリックは自分が原因だと予想はしていたようです。そして私が人質の候補になっていた事も彼は知っているのでしょう。
第二の課題の直後ですから、それについてのことで私が泣いていたと彼は考えたのだと思います。
誰が彼に私が人質の候補であったと話したのでしょうか。
誰でもいいですが。
「いいえ、違います。貴方が原因ではありません」
私はセドリックへ否定の言葉を言いました。
確かにセドリックの存在が理由ですが、クィディッチやホグズミートの件は私の油断もありました。
たとえ、これを責めればセドリックに嫌われるとしても。
嫌われて彼が私に近寄らなくなるとしても。
誰のせいだなんて私は言いたくはありません。
それが、泣いた理由でしたらなおさらです。
「セドリック、私は貴方に嫌われるような要素はあっても、好かれるような事をした覚えはありません。それなのになぜ、私をそんなに気にしてくださるのですか」
いつか言った質問を私は再び質問しました。
セドリックが私を、せめて嫌ってくだされば良かったのに。
貴方の優しさが憎たらしいです。
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